鈍的外傷 -二重条痕・外因性辺縁性出血-

今回は鈍的外傷の際に認められる"二重条痕"について書いていきたいと思います。

この"二重条痕"は特殊な条件下で起こりやすいと言われており、時に虐待などにおいても問題になることがあります。



『二重条痕』[double linear marks]:直接打撃を受けた部位が蒼白調を呈し、その周縁に皮下変色が生じた創傷のこと。("辺縁性出血"と呼ぶこともある)


具体例を挙げると...

棒状の鈍体による打撃 → 平行な2本の皮下変色が出来る。

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円形の鈍体による打撃 → 蒼白な円をさらに囲む皮下変色が出来る。

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詳しく説明していきます。



【二重条痕】

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"二重条痕"では、文字通り『2本並んだ線条痕が認められること』を言います。

ただし、単純に2本の線条痕が並んでいたとしてもその成傷機転まで考えることが重要です。

この"二重条痕"は『1度の打撃で出来る』というのが大事です。

"2回打撲を受けて出来る2本の線条痕"ではないのです。


1回の打撃によって二重条痕が出来る機序は、、、

直接打撃が作用した部位では、血管内の血液が周囲へ押し出されその部分に蒼白部が形成されます。

そして、その押し出された血液によって周囲の血管で破綻したり、打撃周囲の組織にズレが生じることで皮下出血・皮内出血が形成され、目に見える線条痕が認められるのです。


典型的には、「棒でひっぱたかれた」というような状況で認められることが多いです。

鋭い刃物では皮膚が切れてしまうのため、"二重条痕"は起きません。

鈍い物体(鈍体)の打撲によって"二重条痕"は出来ます。


『1回の打撃で2本の線条痕が出来る』というのも重要なポイントですが、

『二重条痕が形成されるにはある程度強い外力がかからなければならない』という特徴もすごく重要です。

つまり棒状の硬い物体でひっぱたかれても、比較的弱い打撲であればこの"二重条痕"は出来ません。

また衣服といった緩衝材が皮膚の上に介在する場合ににも、この"二重条痕"は形成されないと言われています。


・裸に近い状態に対して
・比較的強い鈍的外力による打撲

→...ということは『虐待か?』という流れに繋がるのです。

従って、子供や高齢者といった弱者の身体にこのような"二重条痕"が認められた場合は注意して死因を究明していく必要がありますね。



以上、今回は"二重条痕"を取り上げました。

キズには多くの鑑別ポイントがあります。

鑑定人はそれらのポイントをきちんと知っておく必要があります。

日々勉強ですね。