『こんなことで、死にたくなかった 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』レビュー

2025年3月25日発売 1760円 [1600円+税] 三笠書房 (出版社URL)

『こんなことで、死にたくなかった 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』B6判 全248頁 (著者:高木 徹也)

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「え、こんなことで人生終わり!?」
大切な人を突然失わないために知っておきたい高齢者の「まさか」の死因について。

パンで死ぬ/トイレできばって死ぬ/エアコンで死ぬ/性行為で死ぬ/薬の包装シートで死にかける/急に怒って死ぬ/田んぼを見に行って死ぬ/葬儀場で死ぬ/熱いお茶を飲んで死ぬ......
高齢者の日常には、突然死の危険がたくさん潜んでいます。

本書では、5000体以上を検死・解剖してきた「死因のプロ」が49の事故例を紹介し、なぜ死に至ってしまうのか、どうしたらそのような危険を回避できるか、を解き明かしていきます。

死の危険は、知っていれば避けられる可能性は高くなる。

「まさか、こんなことで」死なないために──
最期はやっぱり、老いで逝くために──
この本は、大切な命を救う本です。

死の危険は、知っていれば避けられる。
本書では「なぜ死に至ってしまうのか」「そのような危険を回避する方法」も解説しています。


1章 日常生活に潜む死の危険
パンで死ぬ/熱いお茶を飲んで死ぬ/薬の用法・用量を間違えて死ぬ/お風呂で死ぬ/急に怒って死ぬ/性行為で死ぬ/トイレできばって死ぬ/風邪をこじらせて死ぬ/こたつで死ぬ/扇風機で死にかける/受診する病院を間違えて死ぬ/症状を放置して死ぬ/歯が抜けて死ぬ/定年退職後に死ぬ


2章 家庭内に潜む死の危険
つまずいて死ぬ/押入れに頭をぶつけて死ぬ/エアコンで死ぬ/仏壇の火で死ぬ/睡眠薬で死ぬ/薬の包装シートで死にかける/タンス貯金で死ぬ/七輪を使用して死ぬ/農薬を飲んで死ぬ/ペットに咬まれて死ぬ/雪下ろしで死ぬ/作り置き料理で死にかける/ゴミ屋敷で死ぬ

3章 外出先に潜む死の危険
くしゃみで死ぬ/自然毒を食べて死ぬ/田んぼを見に行って死ぬ/車道に飛び出して死ぬ/蚊に刺されて死ぬ/徘徊して死ぬ/軽い交通事故で死ぬ/飛行機に乗って死ぬ/葬儀場で死ぬ/ペダルを踏み間違えて死ぬ

4章 レジャーに潜む死の危険
ジョギングで死ぬ/山菜を採りに行って死ぬ/登山で死にかける/バンジージャンプで死ぬ/プロレス中継を見て死ぬ/磯釣りで死ぬ/シュノーケリングで死ぬ/ゴルフ場で死ぬ/カラオケで死にかける/庭いじりで死ぬ/ボランティア活動で死ぬ/サウナで死ぬ

5章 人はなぜ老いて、死ぬのか
高齢者の孤独死について考えてみた/「老い」はこうして作られる/社会が変われば病気も変わる/犯罪や事故に巻きこまれる高齢者/「死んだほうがマシ」の真意/施設内の虐待について思うこと



テレビドラマの"ヴォイス"や"ガリレオ"、"コード・ブルー"などの監修で有名な現役法医学教授による著書です。

上記の目次の通り、49事例もの各死に様が紹介されています。

扱われている症例も日常的なものばかりなので、専門用語も少なく、文章も平易なので大変読み易いです。

各事例は、良い意味で「いかにも理系の先生が書いているな!」と感じるような端的・簡潔な事例紹介で、個人的にはすごく読みやすかったです。

自験例も紹介しているものの、某有名法医学作家先生のようにストーリー立てて人情味を描くような文調ではなく、多くがサラッと触れているにいるに過ぎません。

それでも、決して無機質な事例報告にはなっておらず、身近に存在する"死"に。きっと一般の皆さんも「へぇ、そうなんだ!」と面白く読めるはずですよ。

同業者である法医学者の目線で言うと、必ずしも法医学事例ばかりではなく、著者の臨床経験も踏まえて書かれている点が大変興味深かったです。


また単に事例を列挙するだけではなく、各事例において【このような危険を避けるには...】と銘打った対策が文末に記載されています。

対応策自体は常識的なものも多く、「◯◯をしない」や「早期に受診する」みたいなものも結構あるので、若干おまけ程度ではありますが、そこも今までの法医学本とは違っていて新鮮でした。


ただ個人的には、この章のみ事例紹介では無いのですが、第5章の『人はなぜ老いて、死ぬのか』の部分が好きです。

現代の社会における高齢者死亡についての、著者なりの考察というか所感というか...。

【孤独死 vs. 孤立死】【高齢者自殺】【高齢者虐待】...etc

そこにこそ、むしろ著者の考えが如実に出ている気がして、読んでいて考えさせられましたねー。


文章が平易なことに加え、全体の文量はそこまで多くありませんので、数時間程度でサラッと読めるかと思います。

「こんなにも身近なところに死はあるんだぞ!」というのを、この本を読んで皆さんにも知ってほしいですねッ!!


ちなみに、以前にこの先生が書いた、似たような趣旨の本を読んだことがあるのですが、それもまた面白かったです。

『なぜ人は砂漠で溺死するのか?』 (著者:高木 徹也)

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この本を読んで面白いと感じた方は、是非↑の本も読んでみてほしいですね!