「法医学に興味がある!...でも給料ってどれくらいなんだろう?」
法医学者になりたいと思っても、実際にどれくらいのお給料が貰えるのか?がわからないと不安ですよね。
そこで、今回は【法医学者の年収・給料】について書いていきたいと思います。
なお、記事にある数字は全て一例に過ぎず、これに該当しないケースもあることを十分理解した上で読んでください。
【法医学者の給料の種類】
まず法医学者の給料には大きく3つあります。
- 大学からの給料(←これがメイン)
- 解剖謝金
- アルバイト代
大学から貰える給料がメインで、そこに+αとして解剖謝金やバイト代が加わる形です。
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
【法医学者の給料の詳細】
① 大学からの給料
法医学者の殆どが大学教員なので、大学からの給料が年収のメインとなります。
あくまで"目安"ですが、大体下記の通りの年収となっています。(ボーナスや手当を含む。"手取り"ではない)
- 教授 → 1000万円+α
- 准教授 → 800万円+α
- 講師 → 700万円+α
- 助教 → 600万円+α
基本的にこれは大学教員で共通しているので、法医学教室所属だからといって「特別低い/高い」はありません。
病院勤務医のように当直等はありませんので、勤続年数や各種手当等による小さな変動はあれど、大きく増加することはないです。
② 解剖謝金
法医学独特の収入として"解剖謝金"があります。
正確には、【司法解剖謝金】と【死体鑑定謝金】の2種類です。
まず解剖謝金には、大きく3つあります。
- 司法解剖謝金:解剖に対する"鑑定人"への謝金。解剖時間毎に支払われる。
- 死体鑑定謝金:鑑定に対する"鑑定人"への謝金。鑑定書の枚数毎に支払われる。(※鑑定書を出さないと貰えない)
- 司法解剖検査料:検査に対する"大学"への費用。実施検査毎に支払われる。
この3つのうち、法医学者(→鑑定医)に直接支払われるのが、【司法解剖謝金】と【死体鑑定謝金】なのです。
全国一律であり、具体的に支払われる金額も決まっています。
さすがに詳細まで出すと御上から叱られそうなので、10年以上前に出された通知から引用したいと思います。
(引用:司法解剖に伴う経費の取扱いについて(通知) @文部科学省)
厳密に言うと、現在では個別の金額は変わっていますし、支払金額の天井も決められていますが、考え方としては今でも大きく変わっていないので、大いに参考になると思います。
ちなみに、司法解剖謝金は鑑定医が教授か?非教授か?で金額が違い、教授の場合は現在【9360円/1時間】です。
(引用元:「法医学」の世界 @鳥取大学医学部附属病院)
また司法鑑定謝金は、現在大幅に増額されています。
結局両者を合わせると、臨床医でいうところの【休日の当直代】くらいにはなります。
法医学者にとって、正直これはかなり大きいです。
週に1回 司法解剖を自分で執刀して、きちんと鑑定書まで出せば、年収が+数百万円になる可能性もあります。
ちなみに、個人の収入には関係ないものの、"司法解剖検査料"という項目もあります。
金額は各検査項目毎に決められており、検査を実施する毎に請求できます。
しかし、こちらは法医学者個人の懐に入るわけではなく、"大学"に支払われます。
※調査法解剖について
法医解剖には、"司法解剖"だけでなく"調査法解剖"もあります。
「調査法解剖を執刀した場合はどうなの?」と思う人もいるかも知れませんね。
実は、こちらに関しては『費用の全てが大学に支払われる』という形になっており、法医学者個人には1円も支払われません。
従って、法医解剖において法医学者個人に支払われるのは、あくまで【司法解剖謝金】と【死体鑑定謝金】だけです。
③ アルバイト代
最後はアルバイト代です。
これは、法医学者であっても、基本的に"臨床医としてのアルバイト"であることが多いです。
当直(=病院に泊まり勤務)なら1夜で約3〜5万円、休日なら1日で10万円弱といったところでしょうか。
「毎週〇曜日」や「月に〇回」みたいな形で勤務すれば、頑張れば月に数十万円(≒ 年間で数百万円)になるわけですね。
実際、現在法医学者として働く多くの先生がアルバイトをやっており、生活の足しにしています。
ただし、各大学でアルバイト・外勤に関する規定が設けられており、本業(=大学業務)に支障が出るほどの勤務はできません。
ちなみに、私が院生の頃はバイトだけで生活していましたが、年収は約700万円でした。(※教室の方針に因るが、院生にバイト制限はないため)
その他、特殊なアルバイトとして、一部地域の法医学者であれば【非常勤監察医】という形もあり得ます。
しかし、解剖謝金やアルバイト代に比べると、金額はそれほど大きくはないそうです。
【まとめ】
まとめますと、、、
- 大学教員としての給料【約600〜1000万円】
- 解剖謝金【数百万円】
- アルバイト代【数百万円】
合計すると、普通に頑張れば、大体約1000万円弱くらいの年収にはなります。
とは言え、司法解剖を執刀させてもらえなければ解剖謝金は貰えませんし、自分でバイトを探して大学規定の範囲内で働かなければバイト代も入りません。
特に解剖謝金は、そこの法医学教室で行われる司法解剖全てを特定の法医学者1人だけで行うわけではありませんし、そもそも都道府県によって解剖数自体も様々なので、結果的に数百万円に至らない場合も普通にあります。
なので、単純に「法医学者も高給じゃん」と思うのはやや安直すぎるかも知れません。
以上、今回は【法医学者の年収・給料】について見てきました。
冒頭に書いたように、記事にある数字はあくまで一例に過ぎません。
あまり数値ばかりに目を向けるのではなく、法医学者の実態を知り、「法医学者の生計の立て方」の目安にしていただければ幸いです。