今回は銃創に関連した"Oral Stretch Marks"について書いていきたいと思います。
"Oral Stretch Marks"...日本語に訳すと【口部伸展創】です。
これは歴とした専門用語ではなく、単なるキズの状態を表した言葉に過ぎません。
おそらく教科書にも直接ワードとしては載っていないでしょう。
しかし、大変興味深いキズなので、サラッと触れたいと思います。
【Oral Stretch Marks / 口部伸展創】
口部の皮膚が伸ばされてできるキズです。
創傷の分類で言うなら、"裂創"もしくは"伸展創"です。(参考リンク:「裂創」「伸展創」)
何故これが重要なのか?というと...
「拳銃による自殺を示唆する所見の1つ」と言われるからです。
あくまである教科書の一説に過ぎませんが、
「拳銃による自殺の場合は、銃口を咥え込んで密閉するのため、発砲した際の爆風によって唇が伸展して裂創が出来る」というのです。
逆に他殺の場合は、恐怖心から口を密閉させることはないので、その口の隙間から爆風が抜けて伸展創が出来ないということですね。
従って、この"Oral Stretch Marks"は自他殺の鑑別に重要なポイントであるとのことです。
確かに、一見すると、理屈は通っているようには思います。
しかし、残念ながら、私はこのようなシチュエーションの解剖経験が無いため何とも言えません...。
でも、海外の偉い先生がおっしゃっているので、「まぁ、そうなんだろうな」です。
ただし注意点もあって、散弾銃やライフル銃のように、発砲時の爆風が比較的強い銃では、口を密閉していよう(≒自殺)が、密閉してなかろう(≒他殺)が、口唇に裂創は出来ます。
また大前提ですが、「銃身を咥え込んでいるからといって、必ずしも自殺とは限らない」(=銃身を咥え込んでいないからといって、必ずしも他殺とも限らない)ということにも気をつけなければなりません。
あくまでも「一つの傾向に過ぎない」ということですね。
ということで、今回は"Oral Stretch Marks"について簡単に書きました。
まるでドラマや小説に出てきそうな所見ですよね。笑
日本では、拳銃自殺は少ないので経験する機会は殆ど無いとは思いますが、私も出会った際は気をつけて検案したいと思います!