『死因究明の科学 法医学的アプローチから見る生命の終焉』レビュー

2025年3月発売 3520円 [3200円+税] 医歯薬出版 (出版社URL)

『死因究明の科学 法医学的アプローチから見る生命の終焉』A5判 全156頁 (著者:大澤資樹)

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法医学の現場から解き明かす,生と死の境界線

●法医学の第一線で活躍してきた著者が,その豊富な経験と知見をもとに,突然死や児童虐待,孤立死など,法医学が関わる様々なケースを丁寧に解説.
●生と死の境界線から脳死,医療事故,災害時の死体検案まで,現代社会が直面する重要な課題に切り込んでいる. 死因究明の現場で培われた確かな視点と,学者としての深い洞察から,生命の尊厳と社会の在り方を問いかける一冊である.医療関係者はもちろん,法律家や一般の方にも,死生観を深める貴重な知見を提供している.

第1章 生と死の境界線
第2章 脳死
第3章 死亡診断
第4章 看取りの場での工夫
第5章 死因究明の実践



東海大学法医学教室を退官された元教授が書かれた本です。

テキスト・教科書の類いの本ではありませんので、法医学に関する教科書的な記載は少ないですが、

内容説明にあるように、ご自身の経験と知見を基にして、第1〜5章までの各テーマを法医学者の視点から取り上げています。


第1章は基礎的な"死"を扱い、さらに第2章で"脳死"やそれに関する臓器移植などについても詳細に記載されています。

(ただ日常的に死に接する法医学者ではありますが、案外?法医学者は脳死判定に立会しないんですよね...)

第3章では、実際に悩みどころの多い死亡診断に関する章です。

"変死"や"死亡診断書/死体検案書"、"死因の種類"など、死因究明のシステムについて記載されており、おそらく医師が最も知りたい内容がここに書かれています。

そして、ここでは【異状死ガイドライン】に関する背景や経緯についても丁寧に書かれており、是非臨床医の先生方に読んでいただきたいですね!

【シップマン事件】に触れているところも個人的には興味深かったですね。(Wikipedia記事:「ハロルド・シップマン」)

第4章・第5章では、"遠隔での死亡診断"や"入浴中急死(ヒートショック)"、"乳児突然死"、"児童虐待"、"身元特定"などの近年話題のテーマが書かれています。



冒頭にも書いたように、著者が生涯をかけて経験し、関心を抱いたテーマについて深掘りしたような感じとなっています。

内容的には、個別の事例を振り返るというよりは、アカデミック寄りの内容なので、一般向けというよりは医療従事者向けの本と言えそうです。

「"医歯薬出版"から出ている」ということも、そういう意図の表れなのでしょう。

そういう意味では、一般向けのエッセイに比べると読み応えはあります(が、教科書のようにかしこまってはいない)ので、

興味のある先生は、一度手に取ってみてはいかがでしょうか!?