第119回医師国家試験 C問題 問47 [119C47]

119C47
58歳の女性。既往歴に特記すべきことはない。昨日、交通事故で死亡した息子の通夜があった。息子の傍にいたいと言って棺が安置されている部屋に行ったまま、朝になっても帰ってこないのを不審に思った夫が部屋に行ったところ、棺内に上半身を入れた状態で死亡しているのを発見した。
死因で考えられるのはどれか。

a トルエン中毒
b 硫化水素中毒
c 一酸化炭素中毒
d 二酸化炭素中毒
e ホルマリン中毒




正答は[d]です。


[a] 誤り。【トルエン中毒 ≒ シンナー中毒】です。今回のケースには関係しません。

[b] 誤り。一時期、特定の入浴剤とトイレ洗浄剤を混ぜることで発生した硫化水素を使った自殺が流行しましたが、当該入浴剤の発売停止をきっかけに件数は次第に減少していきました。今回のケースには関係ありません。

[c] 誤り。練炭や排気ガスによる中毒が有名ですが、今回のケースとは関係がありません。

[d] 正しい。ご遺体を冷やすためのドライアイスが溶け、発生したCO2によるCO2中毒死です。

[e] 誤り。系統解剖や病理学で、ホルマリンに馴染みのある学生がいたかも知れませんが、今回の問題には関係しません。



これはかなりトレンディな問題ですね。

2023年に、棺内のドライアイスから発生した二酸化炭素による中毒死事例が、ニュースでも報道されました。

それを受けて消費者庁も、注意を促すページをHP上に公開しています。(参考リンク:消費者庁「棺内のドライアイスによる二酸化炭素中毒に注意」)

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機序としては単純で、空気より重い二酸化炭素が棺の中に溜まって、それを吸った遺族がCO2中毒で亡くなってしまうわけです。

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酸欠の要素ありますが、棺のような閉鎖空間では、高濃度のCO2が溜まるので、二酸化炭素中毒の影響の方が強いとされます。


このように、ニュースになった死因報道が、比較的すぐに国試に出題されるとは、、、恐るべし医師国家試験です。

今後もこういった類いの報道には注意が必要ですね...。


ちなみに、過去には"棺"だけでなく、"ドライアイス搬送業者"に対する注意喚起もなされています。

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