死体は水に浮くか?沈むか?

以前の"腐敗ガス"の記事に関連して、もう少し筆を進めたいと思います。

『ご遺体は水中で浮くのか?沈むのか?』です。

皆さんはどう思いますか。


結論を書くと『どちらのケースもある』です。

はっきりした答えではなくて申し訳ないです。

詳しく書いていきます。



教科書には『水中死体の70〜80%は死後にまず水没する』と書かれています。

しかし、ご遺体がそのまま沈んでいるなら、地引き網に引っかかるなどしない限りご遺体が見つかることはありません。

実際は、ご遺体は水面を浮かんでいる状態を発見されます。
(そもそも潜って探さない限り、海上からは浮かんでいるご遺体しか発見しようがない。)

つまり、一度沈んだ後、ご遺体は再び浮かんでくるのです。

今回はこのご遺体が浮上するメカニズムについてみていきたいと思います。



一般的には、通常のご遺体は浮きます。

これは肺に空気が入っているからです。

皆さんもプールで何もしなければプカプカ浮いてますよね。


ただ溺死体では違っており、まず沈みます。

これは逆に浮き袋となる肺が水浸しになり含気しない(空気を含まない)ためです。

息を目一杯吸い込んだ肺の比重は1を下回り、息を吐いた肺の比重は1を上回るとされます。

水の比重が1(※海水は1.03)ですので、そこからもわかりますよね。


しかし、溺死したご遺体であっても、時間の経過とともに腐敗は進みます。

キャスパーの法則の関係で、水中では地上ほど腐敗速度は早くありません。

それでも腐敗が進めば、地上と同じように水中でも腐敗ガスは産生されます。

そうなると当然ガスによる浮力が生じます。

そうして溺死し沈んでいたご遺体も時間が経つと再び浮かんでくるというわけですね。

水難事故において、後になってご遺体が発見されるようなケースは、このように徐々に発生した腐敗ガスによってしばらくしてから浮上してくるためです。

ちなみに腐敗ガスの浮力というのも侮れず、「体重と同じくらいの重りを付けていても浮上した」という報告もあるくらいです。


ただし、その浮かんでくるまでの時期(="浮揚時間")は腐敗ガスの産生に左右されます。

つまり腐敗が早く進めば腐敗ガスも早く産生され、浮かんでくるまでの期間も短くなります。

具体的に、夏は水温も高いですので腐敗の進行が早くご遺体の上昇まで早く、冬は比較的時間がかかります。

浮上してくる期間の目安としては、【夏で~数日、春秋で~数週間、冬で~数ヶ月】とも言われます。


また水深が深くなると水圧も高くなります。

水圧がかかってくると、腐敗ガスによる浮力が弱くなります。

従って、水深が深いと多少の腐敗ガスくらいでは浮上しにくくなります。

そのため、"浮上しない条件"として、

・水深10mなら水温11℃以下
・水深20mなら水温13℃以下
・水深30mなら水温14℃以下
・水深40mなら通常の水温では浮上しない

なんて目安もあります。

つまり「水深が深ければ浮上しにくい(時間がかかる)」「水温が低ければ浮上しにくい(時間がかかる)」と言えます。



ということで、ご遺体は水に浮くのか?沈むのか?というのは、『どのフェーズにご遺体の状況があるか?に左右される』ということになります。