法医学者が少ない理由 (大学院生の人数)

皆さんも「法医学者が少ない」というのは知っているかと思います。

『法医学者は140人』なんて話もよく聞きますよね。


では、その理由は何なのか...?

これについて知っている人は実際多くないと思います。

今回は「法医学者が少ない理由」について書いていきたいと思います。



大きな理由として、以下の2つが挙げられます。

・ポストが少ないから
・志望者が少ないから


一つずつ見ていきましょう。



『ポストが少ないから』

法医学者として働くにも"働き口"がなければなりません。


法医学者として働くには、

・大学の法医学教室
・監察医務院

法医学をメインとして働いていくには、原則としてこのどちらかになると思います。

監察医制度を導入している地域は限られていますので、実質前者の法医学教室が殆どになるかと思います。


法医学教室は、大学の中にある講座の一つです。

解剖学講座、公衆衛生学講座とかと同じ位置付けですね。


その中で、法医学者は大学教員として働きます。

つまり教授や講師、助教などですね。

こういった大学のポストには限りがあります。(参考記事:「法医学教室のポスト」)

昨今の大学予算の減少の煽りもあって、むしろこのポストは大きく増える傾向にありません。

法医学教室の独断でポンポン無尽蔵にポストを作るわけにはいかないんですよね。

なので、法医学者になりたければ、必然的にこの限られたパイを取り合うことになってしまいます...。

法医学者になりたくても、「ポストがなければ法医学者にはなれない」ということです。


これに関しては法医学業界も危機感を覚えていて、何とかポストを増やしてもらうよう働きかけていますが、大学の意向にも依るのでそう簡単にもいかないようですね。。



『志望者が少ない』

これも確かに根本的な問題でもあります。

法医学医に関しては、そもそもまずは医学部に入学することから始まりますからね。

そして、そこから臨床医ではなく、法医学医という道を選択するのは、数字だけみてもかなりのレアケースです。

医学部医学科が一学年100人くらいですが、そこから法医学を目指す人は毎年1人もいません。


法医学者の人員に関する資料によると、全国の医師免許を持つ博士課程の院生は約60人です。

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大学の法医学教室が全国で87校あるので、各大学に1人もいない計算になります。
(※実際大学院生も偏在化しているので、大学院生のいない法医学教室も普通にあります。)

そう考えても、法医学者の卵自体も多くはないですね。。

これでも「近年増えてきている」と言われているくらいですから、その少なさが理解できると思います。


また博士課程は通常4年なので、普通に行けば1年間に15人の法医学者が生まれる計算になります。

その受け皿すら...という現状を考えるとやはり厳しいですね。

そう考えても、前述のポストの問題を何とかしないと、受け皿がないままなので、個人的には「まずはポストを増やすことから...」とは思いますね。



これからの法医学を担うのは当然若手の法医学者なわけなので、今後を考えると決して楽観的にはなれません...。

しかし、ポストの問題もあるので、安易に学生さんを呼び込むわけにもいきません。。

現状は、自分達の法医学教室で面倒を見きれる範囲で最大限努力していくしかなさそうです。

何とか根本的な問題を解決し、希望する学生さん皆が不安を抱くことなく法医学を目指せる世界になれるよう、私もできる範囲で精一杯頑張ります。