死因統計の"心不全・呼吸不全"は無くなっていない

平成7年(1995年)1月から、死亡診断書は現行の形式に変更されました。

その中で、ある注意書きが周知されました。

『死亡の原因欄には、疾患の終末期の状態としての心不全、呼吸不全等は書かないでください』

この注意書きによって平成6年前後の"心疾患"死亡者数が大きく減ったのは、医学生の頃に勉強したかと思います。

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それでは、この平成7年以降、死亡診断書に"心不全"や"呼吸不全"という文言が完全に消えたのか?と言われるとそうではありません。


令和2年の死因統計をみてみます。(※画像クリックで大きくなります)

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心不全(I50.9):6万6826人
呼吸不全(J96.9):1581人


このように、死因に"心不全"や"呼吸不全"は普通に使われているのです。



これは統計ルール上、問題はありません。

注意書きの、さらに注意書きがあるからです。

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『疾患の終末期の状態としてではなく、明らかな病態としての「心不全」、「呼吸不全」を記入することは何等問題ありません。』

ですので"明らかな病態として"であれば、心不全・呼吸不全を死因として書いて良いのです。


しかし、実際のところ、この"明らかな病態として〜"は果たしてきちんと守られているのでしょうか。


役所に死亡届を提出する際、確認されるのは形式(書き方)についてだけです。

形式に問題がなければ普通に受理されます。

死亡診断書の記載だけでは、それが「明らかな病態か?そうでないか?」は分かり得ませんからね。

ですので、仮に医師が"終末期の状態として"急性心不全"や"急性呼吸不全"を記載しても、普通に受理され、それが死因統計に載ってしまうのです。



もちろん、世の中の死亡診断書の記載医が全て"明らかな病態"として心不全や呼吸不全を死因として記載しているのなら全く問題はありません。

ですが、ちらほらと「そうではない」という声が風の噂で私の耳にも聞こえきます。

ただもうこれは"医師の良心"に任せるしかないのです。


昨年急性心不全で亡くなった約7万人の方々は、果たして明らかな病態としての心不全だったのか...。

それは『記載した医師のみぞ知る』です。