今回は"verbal autopsy"について書いきます。
日本語では"口頭剖検"と呼ばれるようですが、私自身もあまり聞きません。
英語での[verbal autopsy](=VA)の方が有名な気がします。
【verbal autopsy】:遺族や医療スタッフへの聴取に基づいて死因を確認するために用いられる手法。
Verbal autopsy is a method used to ascertain the cause of a death based on an interview with next of kin or other caregivers. (※WHOより)
主に死因究明システムが確立されていない発展途上国で行われるようです。
詳しく見ていきましょう。
死因を究明する目的は様々ありますが、"公衆衛生的観点"もとても重要です。
この[verbal autopsy]でも目的は「公衆衛生の向上」です。
その死因情報を以て、国全体として予防策や対応を考えていくわけですね。
全世界で死因究明のゴールドスタンダードは"解剖・剖検"ですが、
・医師がいない
・設備がない
・予算がない
等で解剖を満足に行えない国も当然あります。
そこで行われるのが[verbal autopsy]です。
一部の国では体系化された"口頭剖検"システムが確立されているそうです。
"口頭剖検"という名前でも分かるように、これは"インタビュー"がメインになってきます。
故人の身体にメスを入れるわけではありません。
ご遺族やまたは周囲の医療スタッフに対して、ご遺体のが生前の症状や状態を専門のインタビュアーが聴取します。
それらの情報を用いて医師が死因を判断するという流れです。
こういったインタビュー項目や診断アルゴリズムはいろいろと研究され、前述のようにWHOも基準を"verbal autopsy"の基準を定めています。(参考URL:WHOサイト)
"verbal autopsy"は臨床医が行う"問診"にかなり近いですね。
「"問診"だけで8割分かる」なんて言われますが、本人からリアルタイムで訴えを聴取できる"問診"に比べると、[verbal autopsy]はやはり後れを取ってしまいます。
それでも解剖システムが整っていない(時には死亡統計すら満足でない)地域では安価・迅速・有用なツールであることに違いありません。
以上、今回は"verbal autopsy"をご紹介してみました。
近年は『この診断アルゴリズムをAI(人工知能)にやらせるとどうなるか?』というのも研究されているようです。
もし今後診断精度が上がってくるようなら、解剖システムが整っている先進国であっても有用な補助ツールとして使われるようになるかも知れませんね。