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診察医に届出の義務がないのはどれか.
a 麻薬中毒
b シンナー中毒
c 人工妊娠中絶
d 縊首自殺
e 医療事故死
正答は【b】です。
[a] 誤り(=届出の義務はある)。麻薬中毒は、麻薬及び向精神薬取締法 第58条の2によって「医師は、診察の結果受診者が麻薬中毒者であると診断したときは、すみやかに、その者の氏名、住所、年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項をその者の居住地の都道府県知事に届け出なければならない。」と定められています。
[b] 正しい(=届出の義務はない)。シンナーは"毒物及び劇物取締法"によってその使用等が規制されていますが、[a]の麻薬中毒のように、シンナー中毒を診断した際の届出義務は定められていません。
[c] 誤り(=届出の義務はある)。人工妊娠中絶は、母胎保護法 第25条によって「医師又は指定医師は、第三条第一項又は第十四条第一項の規定によつて不妊手術又は人工妊娠中絶を行つた場合は、その月中の手術の結果を取りまとめて翌月十日までに、理由を記して、都道府県知事に届け出なければならない。」と定められており、人工妊娠中絶の実施医は届け出る義務があります。
[d] 誤り(=届出の義務はある)。"縊首自殺"は外因死ですので、医師法 第21条に基づく異状死体の届出を行う必要があると考えられます。
[e] 誤り(=届出の義務はある)。医療事故死も異状死体の届出が考慮されるケースの一つです。この問題は2002年に出題されたものですが、後述のように、2015年(平成27年)から"医療事故調査制度"が運用開始となっており、場合によっては「当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であつて、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたものとして厚生労働省令で定めるもの」として、病院等の管理者に、この制度に基づく届出義務がある可能性があります。
医師の届出に関する問題です。
・麻薬中毒診断の届出
・異状死体の届出
が問われています。
"医療事故調査制度"について補足します。
[e]でも書いたように、現在(H27年〜)は医療事故調査制度が運用されています。
そのため、現時点では、該当する医療事故の場合は「"管理者"(→主に院長など)が"医療事故調査・支援センター"に届け出る義務がある」と言えます。
医療事故調査制度の根拠法は"医療法"になります。
Q. 医療事故とは何を指すのか?
A. 医療事故:当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であつて、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたものとして厚生労働省令で定めるもの ※医療法 第6条の10
Q. 「"医療"に起因し〜」の"医療"とは何を指すのか?
A. 医療:手術、処置、投薬及びそれに準じる医療行為(検査、医療機器の使用、医療上の管理など) ※医政発0508第1号
厳密なことを言い出すと、上記のような定義に当てはまるか?というのを考えなければなりませんが、国試的にはそこまでは問われないでしょう。