新年が始まって、法医学者が気をつけるべきことがあります。
それは、死体検案書を作成する際の【死亡したとき】欄です。
この【死亡したとき】というのは、文字通りお亡くなりになった時刻を書きます。("死亡確認時刻"ではない)
明確な時刻が分からない場合も、死亡時刻を推定して書きます。
従って、新年明けて間もない頃は『"死亡したとき"と最下部の"検案日"の年がズレる』のです。
死亡したときと検案日で、"月"や"日"がまちまちなのはいつものことなのですが、
"年"が違ってくるのは年始しばらくの間だけなので、どうもミスをしてしまいがちなんですよね...。
私自身も毎年この時期はよく事務員さんに記載ミスを指摘されちゃいます。
少し話は逸れますが、元号が「平成→令和」に変わった当初も似たようなミスが多発しました。
検案日(≒書類作成日)は"令和"になっているのに、勘違いして『平成31年5月1日』と書いてしまって、
そしてそれを事務員さんやご遺族も気付かず、役所の方が窓口で初めて気付くなんてことも...。
このデジタル化が推進されている世の中において、死亡診断書(死体検案書)は未だ"原則手書き"の珍しい書類と言えます。
確かに、「だからこそこんなミスも起きてしまうのか...」と感じたりはしますね。
知り合いの法医学医の中には、
「書き損じの修正が煩雑である」
「自分の字に自信がない」
「そもそも手書き自体が大変である」
などの理由から、デジタル化を早く進めてほしいと願っている人もいます。
実際にこの分野もデジタル化が徐々に進んできているようですね。(→ ※死亡診断書作成ソフト"DeidAi")
ただ、個人的には「(無機質な印刷物に比べ)執刀医が心を込めて手書きする良さもあるのでは?」と信じていたりもします。
とは言っても、時代の流れもありますし、今後はきっとこれもデジタル化されることでしょう。
少なくとも死体検案書のデジタル化が完了するまでは、ミスなく丁寧に手書きすることを心掛けたいものですね。