死亡診断書と死体検案書

今回のテーマは試験でも山場になるくらいメジャーなところですね。

『死亡診断書と死体検案書の違い・使い分け』です。

正直なところ、これに関しては厚生労働省からその名もズバリ『死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル』というものが毎年発行されておりますので、それを読めば大抵のことは分かると思います。(※マニュアルのリンクはこちら)



まずは死亡診断書・死体検案書の原本をお見せしたいと思います。

こちらです。

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同マニュアルには、この死亡診断書・死体検案書の意義として大きく2点あるとされています。

①人間の死亡を医学的・法律的に証明する

→この書類の提出によって、火埋葬許可証がもらえ火葬・埋葬が可能となり、また最終的に戸籍が抹消されることになります。


②我が国の死因統計作成の資料となる

→厚生労働省のHPで毎月志望者の速報値が公開され、年一回そのまとめが出されており、公衆衛生等に役立てられています。(その統計によってわかった死因に対して予防策を講じることで社会に役立てる等)


死亡診断書・死体検案書をきちんと作成することは大変重要な役割を持っているということです。



画像は死亡診断書・死体検案書のA4用紙だけですが、実は左に同じA4の"死亡届"という用紙も一緒になっています。

ちなみに、この死亡届の方は、役所に提出する際にご遺族が記入する項目となっております。


このように死亡診断書と死体検案書は本来同じ書類であり、使用しない方を二重線で引いて消して使用します。

死亡診断書は医師・歯科医師が発行でき、死体検案書は医師が発行できる書類となっています。


それでは、実際のところ両者をどう使い分けるのか?

それについても、マニュアルをみていただいた方が理解しやすいと思います。

少し問題があって数年前からこのフローチャートがマニュアルからなくなってしまったので、昔のマニュアルから抜粋しています。

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※フローチャートをみると、異状があっても死亡診断書を発行する場合は所轄警察署に届け出なくて良さそうに読めますがそうではありません。どちらの書類を選んでも『異状を認める場合は必ず24時間以内に所轄警察署に届け出て』ください。


見ていただいてわかるように、かなり単純です。

・亡くなった方が診療継続中(≒定期的に病院にかかっていた)である
・死因は定期的にかかっていたその病気である

この2つをどちらも満たす場合にのみ"死亡診断書"が選択されます。

逆にそれ以外の場合は全て"死体検案書"を選ぶということですね。

救急の現場等に運ばれてきた患者さんに対して蘇生処置を行ったものの、残念ながら亡くなったケースなどで、『その死因が内因性でありかつ明らか』であれば、診療継続中の病気による死亡として、死亡診断書を出せるという考えもあります。



あと勘違いしやすいポイントとして、医師法20条が挙げられます。

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死亡診断書・死体検案書はきちんと自らが診察・検案した上で作成しなければなりません。」(原則)

ただ『生前に診療していた病気に関連した死亡であることがわかる場合(他の医師からの伝聞等)のみ、自ら診察しなくても死亡診断書を発行できます。』(例外)

この例外がしばしば勘違いされます。

ただ実務上は、上記例外条件に該当しても、できる限り原則通りにご遺体を診察した上で死亡診断書を作成する方がいろんな意味で良いと思います。



あと死因を決定した後、それに対応した『死因の種類』という分類番号を選ぶ項目があります。(参考記事:「死因の種類」)

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その項目で、病院で最も頻繁にみるのは①『病死及び自然死(≒老死)』ですが、お風呂で溺れれば④『溺水』ですし、火災事故では⑤『煙、火災及び火焔による傷害』、また熱中症や低体温症では⑧『その他』に分類されますので、個々の事例で注意する必要があります。
※ちなみに火災に伴うCO中毒は④です


あと記入に関して間違いやすいのは細かな点です。

・押印は廃止となったので、各署名欄には医師本人の直筆記名が必要である (New!!)
・深夜12時は「午前0時」、お昼12時は「午後0時」と記載する
・番号選択は番号のみに〇をする
・『手術』の欄は死因に関係した手術のみを記載する(死因に関係ない手術は記載しない)

「記載しない・できない欄には偽装を防ぐために斜線を引く」と習った方もいらっしゃると思いますが、実際のところはこれは必須ではありません。

斜線を引いていなくても役所でちゃんと受理されます。


これくらいでしょうか。


もちろんきちんとした書式で書くのは最低限当たり前なことなのですが(不備があれば役所で受理されません)、『この制度の本質として重要なのは"死因欄"である』ことは言うまでもありません。

様々な情報を手に入れて、いかに正確な死因を記載するか?が最も大事なのではないでしょうか。


正直なところ、個人的には死亡診断書・死体検案書を使い分ける意義はあるのか?と思ったりもします。

おそらく当初は警察届出との兼ね合い等を考えて、単純に両者を選んで使うようにしたんだと思うのですが、結局は死亡診断書であろうが死体検案書であろうが異状なら届け出る必要がありますからね...。

もはやそこまで厳密に使い分ける意味はないのではないかとすら感じます。


とは言え、現行制度ではその使い分けの理解は必要なので、ぜひまた改めて整理してみてください。