第103回医師国家試験 E問題 問44 [103E44]

103E44*
65歳の女性.自宅のトイレ内で便器に座ったまま,意識不明の状態で家族に発見され搬入された.到着時,すでに心肺停止状態であった.既往症と通院歴とに特記すべきことはない.画像診断と諸検査とによって大動脈解離による心タンポナーデと診断し,搬入1時間後に死亡を確認した.
担当医として取るべき行動はどれか.

a 警察署に届け出る.
b 保健所に届け出る.
c 市町村保健センターに届け出る.
d 死亡診断書を発行する.
e 死体検案書を発行する.




正答は【d】です。


[a] 誤り。問題文には、明らかに「異状あり」もしくはそれを疑ったような記載はありません。死因も診断されているようなので、あえて警察に届け出る必要はないということだと思います。

[b] 誤り。保健所に届け出るのは一部感染症の診断を行った場合などですが、今回のケースでは死因が「大動脈解離による心タンポナーデ」であり、該当しなさそうです。

[c] 誤り。"市町村保健センター"とは、地域保健法に規定される施設です。その法律の名前の通り、地域保健に関する施設であり、本事例の届け出とは関係がありませn。地域保健法 第18条第2項「市町村保健センターは、住民に対し、健康相談、保健指導及び健康診査その他地域保健に関し必要な事業を行うことを目的とする施設とする。

[d] 正しい?
[e] 誤り? 本事例では搬送後に「大動脈解離による心タンポナーデ」と診断され、その後死亡確認に至っています。これを「自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡したと認める場合」と捉えるなら、"死体検案書"ではなく"死亡診断書"の発行が適切と言えます。



「心肺停止状態で発見され、搬送後の診療で病死が判明したケース」です。

実際に十分あり得そうなシチュエーションですね。


[b]と[c]は選択肢として論外として、

死亡診断書コースか?
死体検案書コースか?

この2択ですね。

後者の場合は、警察に届け出るか?届け出ないか?まで考える必要があります。


結論から言うと、解説の通り、本問では死因は診断されており、問題文に「異状あり」と判断しなければならない記載もないようなので、[d]の"死亡診断書の発行"が正答となっています。


、、、が、本当にそれでよいのか?と思う人もいると思います。

何故なら、「発見時には意識不明、その後の病院到着時には心肺停止であり、発見時には既に亡くなっていたのではないか?」とも考えられるからです。

もし発見時には既に亡くなっていたとしたら、「病院での診療は"診療"と呼べるのか?」とも思えてきます。


正答となっている死亡診断書を発行するシチュエーションとしては、「自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡したと認める場合」とされています。

そうでないなら、"死体検案書"を発行することになっています。

要は「本問の"大動脈解離による心タンポナーデ"は『生前に診療していた傷病』と言えるのか?」ということですね。


何とか理屈をこねるなら「医師が死亡を確認するまでは"生きている"として扱う(から今回は"生前の診療"に当たる)」とは言えますが...

個人的には、このケースはやはり「病院到着時にはに既に亡くなっていた」と考える方が自然だと思います。

そうなってくると、「異状あり」とまでは判断しないにしても、検案の上、最終的に発行するのは"死体検案書"であるべきだと私は思います。

なので、今回の問題の正答に関しては個人的にやや異議ありですかね。



さて、実は某国試過去問サイトでは、今回の103回から解答率が掲載されています。

実際にその具体的な数字をここに載せるわけにはいきませんが、この問題に関してはやはり受験生の回答は割れたようです。

これに関しては私も納得ですね。

というか、「受験生もしっかり考えているんだな!」と感心します。笑

国試の過去問演習をする際は、是非解答率も確認してみてくださいね。



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