今回は"洗冤録"について書きたいと思います。
皆さんは世界最古の法医学書と言われるこの本を知っていますか。
※画像は"洗冤録"そのものではなく、"洗冤録"について書いた和書です。
この本は1247年に中国で書かれたものであり、日本でいうと鎌倉時代になりますね。
この時代は"解剖"はまだ行われておらず、あくまで「外からの観察≒検視」が捜査の初動であったようです。
書いた人は"宋慈"さんという役人さんで、今でいうと"検視官"みたいな役割をしていたそうです。
・白骨死体の見方
・真の首吊りと見せ掛けの首吊りの見分け方
・自殺と他殺の見分け方
・毒殺の見極め方
等々、書かれています。
間違っているところも結構ありますけどね。
『初動捜査は大切である』
『(身内も含めで)騙そうとする人間には気をつけろ』
みたいなコメントもあり、大変興味深いです。
名前の"洗冤"というところからも分かるように、「冤罪を洗う≒防ぐ」という観点からこの本は書かれました。
これがすごいと個人的に思っています。
こんな昔から「(検視を通して)冤罪を減らそう」「真実を突き止めよう」と志高く日々死体の観察を行い、そこで得られた知見を同じように検視に携わる他人のために書物にする、というところに強く感銘を受けます。
単に同じ業務を毎日淡々と繰り返すのではなく、目的意識を持って観察研究を行い、そして最終的にアウトプットする...。
これこそ法医学者のあるべき姿なのかも知れません。
今の私を咎めているかのような気さえしてきます。笑
実務でも研究でもそうですが、単に調べただけで終わりだけでは駄目なんですよね。
それをまとめあげて公表する(学会発表や論文作成する)...。
これをして初めて個々のデータが社会の役に立つんだと感じます。
そこに至るまでは、死因究明・死後診断も、当事者だけの話で終わってしまいますもんね。
こうやって自らを鼓舞しながら、また今日も業務をがんばっていきたいと思います。