今回は"銃器"についてです。
銃器...つまり鉄砲のことです。
この学問体系は日本よりもやはりアメリカをはじめとした海外で進んでいますね。
日本では主に"猟銃による損傷"かもしくは"違法拳銃による損傷"がメインになってきます。
決して多いわけではありませんが、それでも射創のあるご遺体はほぼ100%司法解剖になりますので、法医学者にとっては必須の知識となります。
今回は、ドラマでは頻繁にお目にかかる"銃器・射創"について書いていきます。
さて、例のごとくまず『銃器とは何か?』から始めたいと思います。
ここでは『火薬の燃焼によるガスの膨張などの爆発エネルギーを用いて弾丸を発射する道具』とします。
ちなみに"銃刀法"では空気銃も"銃砲"(≒銃器)に含まれています。
"レールガン"なども銃器と言って良い気もしますよね...。
そして、この銃器による損傷を"射創・銃創"と呼びます。
厳密には銃器による損傷をそのまま"銃器損傷"、ボウガンや弓矢なども含む銃器損傷をまとめて"射創"と呼ぶそうです。
今回は特に区別することなく"銃器損傷"のことを"射創"と呼ぶことにします。
発射時の火薬の爆発(→マズルフラッシュ)による損傷も"射創"に含めることもあります。
ここでは銃器を3タイプに分けます。
①散弾銃
②ライフル銃
③ピストル銃(拳銃)
です。
①散弾銃はショットガンとも呼ばれ、銃身は長く、猟銃としてよく見かけるタイプの銃器です。
後述の2つに比べると射程距離は比較的短く、数多くの小さな弾が放射状に拡散して飛んでいきます。
②ライフル銃は、名前の通りライフリング(=砲身の内側にらせん状の溝が刻まれている)されています。
これによって弾丸が飛び出る際に回転がかかり弾丸の直進性・安定性が増します。
後述の③ピストル銃もこのライフリング加工がされているので、広い意味では③ピストル銃もこのライフル銃に含まれるのですが、ピストル銃は銃身が比較的短いものを言います。
この狭い意味でのライフル銃は銃身が長く、遠距離を射撃するような時などに使用するイメージの銃器ですね。
最後の③拳銃が皆さんが最も?イメージしやすい銃器でしょうか。
ハンドガンとも呼ばれるタイプの銃器で、小型で銃身は短く、警察官が携帯しているタイプのものです。
小型なので携帯しやすく片手でも打てるとされますが、その分ライフル銃に比べると精度や威力は落ちるとされます。
このピストル銃をさらに、オートマチックとリボルバーに分ける分類もあるそうですが、今回は特に分ける意義もないので言及しません。
これら銃器で火薬が爆発して圧縮された空気によって押し出された弾丸が、実際に損傷を起こします。
弾丸は金属ですので、人体に作用すると多くで皮膚や筋肉といった軟部組織は貫きます。
この時の『弾丸が入っていった入口』を"射入口"と言います。
そして、体内を進みながらそのまま貫けば"貫通射創"、骨などに当たり貫かずに体内に残れば"盲管射創"と呼ばれます。
弾丸が突き抜けた場合、『弾丸が出ていった出口』を"射出口"と言います。
その他に下記のような言葉もあります。
"屈曲射創":弾丸が体内に侵入し、弾丸が体内で骨などに当たり方向を変えて出来た損傷。
"擦過射創":弾丸が体内に侵入せず、弾丸の擦過によって出来た損傷。
"反跳射創":弾丸が体内に侵入せず、すぐ直下の骨などに当たって跳ね返った部分にできた損傷。
"回旋射創":頭蓋骨や肋骨のように骨に囲まれた部位で、体内に弾丸が侵入し、その骨などに沿って回旋してできた損傷。
たくさんの用語が出てきてしまいました。
少し長くなってしまったので、続きは次の記事へ回そうと思います。