2020年時点で、日本で飼われている犬は約850万頭、猫は約960万頭だそうですね。
そうなってきますと、まだまだ珍しいケースではありますが、「イヌに噛まれた」というご遺体に出会うことがあります。
臨床医学で言うところの"犬咬傷"ですね。
法医学においては、まさにこの犬咬傷が死因となることもあれば、死後の損壊としてみられることもあります。
オオカミを祖先とするイヌは肉食動物です。
飼い主の死後、食べ物が亡くなって...というケースがないわけではありません。
ちなみに飼い猫も同様ですが、頻度は飼い犬の方が多いと言われています。
イヌに比べると、猫咬傷が直接の死因となることはと少ないものの、死後の損壊としては稀に経験されます。
一般常識的には、犬咬傷は一般的には"身体の柔らかい部位"に受傷すると言われます。
では実際具体的に「どの部位に犬咬傷が多いのか?」というのを考えていきたいと思います。
『犬咬傷』:イヌによる噛み傷のこと。
詳しくみていきましょう。
前述の臨床上では、咬傷に伴う狂犬病などの感染症が問題となります。
特に海外旅行に行った際、野良犬に噛まれた場合は注意しなければなりません。
法医学的に重要となってくるのは、
「咬傷によって死亡したのか?(多くは血管損傷による出血)」
「死後の損壊なのか?」
という点です。
傷みの少ないご遺体では現場の状況から分かることも実際は多いと思います。
ただし死後の損壊であっても、数日、場合によっては数時間であっという間に損壊されてしまうこともあるので、注意が必要です。
ある犬咬傷の症例報告での咬傷発生部位は下記のように報告されていました。
ちなみに、このケースは死因としての犬咬傷の報告です。
イヌはまずヒトの足に噛みつき、倒した後に首を狙うそうです。
実際は、咬傷の7割以上が"頭頚部"で認められ、次いで"上下肢"が多くなります。
この傾向は身体の小さな若年者でより顕著になってきます。
ただ被害者としては高齢者も多いです。
犬咬傷によるキズは、
"圧挫":噛むことによって押しつぶす。
"穿通":(犬歯等)歯によって貫通する。
"裂離":噛んだ後に首を振ったりすることで組織を引き千切る。
大きくこの3つのタイプで構成されます。
これらが組み合わさったキズを法医学者は観察することになります。
以上、今回は"犬咬傷"について簡単にみてきました。
ペットとしてイヌを飼っているご家庭も多いと思います。
社会情勢も相まって、近年は1年以内の新規飼育者の飼育頭数は犬・猫ともに増加しているそうです。(※飼育頭数自体は犬で減少、猫で横ばい。)
独居のご家庭も増えていると思いますので、ひょっとするとこういった犬咬傷に法医学者が出会う機会も増えてくるのかも知れません。