法医学における研究の位置付け

これまでこのブログでも何度も書いてきていますが、法医学者には"三大責務"があります。

・解剖
・研究
・教育

この3つです。


このうち、解剖や教育というのは、言い方は悪いですが、ある意味「否が応でもやらざるを得ない」と言えます。


警察から解剖依頼があれば、特段の理由がない限り原則解剖は行います。(都道府県などによって解剖件数はまちまちですが)

教育についても、学生さんは毎年いますので「今年は法医学の講義はやりません!」なんてことは当然許されません。



これは超個人的な意見にはなりますが、法医学教室によって差が大きく出るのが、残りの"研究"だと思っています。

つまり『研究に力を入れている法医学教室と、そうでもない教室の度合いが著しい』ということです。

今回はそんな"法医学における研究"について書いていきたいと思います。



法医学も当然"医学"ですから、世のため人のために研究することは当然の責務と言えます。

これは大学の役目でもあります。


法医学は法医病理学から、法医画像学、法歯学、法中毒学、法遺伝学、臨床法医学、法昆虫学...etc

いろんな分野がありますから、その数だけ研究分野もあります。(参考記事:「法医学の領域」)

法医学は人が多くはありませんので、『法医学で○○(←特定の研究分野)と言えば●●先生』みたいなこともしょっちゅうあります笑。

それだけ「ニッチな業界である」と言えると思います。

逆に言えば、そんなニッチな業界を支えているのが、法医学者の研究なのかも知れません。



前述のように、実際のところ全国の法医学教室によってこの"研究に対する熱量"は違います。

これは教室や教授の方針・考え方にも依るとは思います。


教室毎に置かれている状況が違うため、研究結果だけでは一概には言えないですが、学会等ではやはりある程度研究を熱心にしている法医学教室の先生が輝いている印象は受けます。

また大学院生を始めとする若手法医学者に関しても、学位の関係でやはりそういった研究熱心な法医学教室に多く在籍しますし、そうなると必然的に教室自体の規模も大きくなります。

つまり「研究が強い法医学教室≒規模の大きい法医学教室」という構図がある気はします。


しかし、規模が小さい法医学教室は、

・人員不足
・設備不足
・予算不足

などから、「研究がしたくてもできない」という事情を抱えていることもあります。

以前取り上げた"常勤医師一人あたりの解剖数"も、そういった"小さな法医学教室"では必然的に多くなってしまいます。(参考記事:「1人当たりの解剖数」)

そうなると、、、

研究ができない→業績が増えない→若手が入らない→規模が大きくならない→人手が足りない→仕事量が増える→研究ができない...

という負のスパイラルに陥ってしまいます。。



ただし、法医学者のやる気次第では、研究設計を工夫したり隙間時間で実験を進めることで業績を上げていくことは不可能ではないわけです。

実際にそうやって業績を上げている高名な法医学の先生もたくさんいますからね。

そんな先生方の姿を見て、私自身も「忙しくても大変でもやるしかない」という思いです。


大学に勤務する人間にとっては、「嫌だ」と言ってもしつこく付きまとってくるのが"研究業績"です...。

私も周りの法医学者に負けじと頑張っていきたいと思います。