解剖助手 [Autopsy Assistant]

今回は"解剖助手"の仕事についてご紹介したいと思います。

「解剖"助手"って何?」
「実際に解剖では何をするの?」

という点に絞って書いていきたいと思います。


なお細かな解剖助手業務については、法医学教室や所属する施設によって違います。

この記事が全てだと思わないでくださいね。



『解剖助手』:執刀医(法医学医)の"解剖補助"を行う者。"解剖補助"は剖出業務に限らない。解剖助手の殆どが"臨床検査技師"の資格を持つが、法医解剖において明確なルールがあるわけではない。


上記の通り、"解剖助手"とは「解剖の補助を行う人」のことですね。

実際に解剖そのもののお手伝いをする(狭義の"解剖助手")こともあれば、「執刀医の口述筆記を担う人」も広義の意味で"解剖助手"と言えるでしょう。


"解剖助手"として働く人の殆どが国家資格である「臨床検査技師」という資格を持っています。

その名の通り、臨床検査(検体検査や生理学的検査など)のスペシャリストですね。


『臨床検査技師でなければ解剖助手にはなれない』という明確な法律やルールがあるわけではありません。(私が知る限りは...)

しかし、解剖助手の殆どが"臨床検査技師"ですので、解剖助手を目指すのなら"臨床検査技師"の資格を取るのが最も近道だと思います。



実際の解剖現場では、(狭義の)解剖助手は"剖出"をお手伝いすることになります。(※剖出:臓器をご遺体から取り出すこと)

『どこまで剖出を行うのか?』

これは施設ないし執刀医に依ります。


日本の教科書には"解剖助手"に触れたものはあまりありませんが、少し古い海外の"Autopsy Assistant"の記載を見ますと、解剖助手の業務は...

①解剖の準備・片付けのみを行う。(実際の剖出全てを医師が行う。)
②頭蓋骨の除去のみを行い、必要時に腸管を開く。(脳の剖出を含む他の作業は医師が行う。)
③脳・心臓やその他気になる臓器の剖出は医師が行い、残りの臓器の剖出を行う。
④医師の監督の下、全ての臓器の剖出を行う。

などのタイプがあると紹介されています。

④タイプは、経験が豊かで手早くて有能な助手がいるような「解剖件数が多い施設」が一般的とされています。


ただし医学知識を用いて解剖所見をとり、最終的に書類に記載するのは医師であることから、

「できる限り臓器の剖出も医師が行うべき」
「特に脳の剖出は医師がするべき(→剖出操作で所見が分からなくなるから)」

という意見も一部にはあるようですね。



前述のように、日本においては解剖助手業務に関する規定や指針はありません。

ですので、実際のところは各施設によって①〜④など様々だと思います。

日本では全国的にどのタイプが多いのでしょうかね?

ある程度の指針や目安があっても良さそうな気は個人的にするのですが、統一されたルールはなかなか作りづらいのかも知れません。



ということで、今回は解剖助手(狭義をメイン)についてご紹介しました。

剖出業務以外にも、前述のように"口述筆記"や各種"検査業務"(病理組織作成や薬毒物検査など)も助手さんが兼務しているところが多いと思います。


実際に私の周りにも頼れる解剖助手さんがいます。

「もう助手さん達がいなければ解剖がうまく立ち行かない」と言っても過言ではないでしょう。

しかし、だからといって、全てを頼りっきりではいけません。

しっかりと自分が担うべき役割は自分で果たす必要があります。