今回は解剖で実際に使う道具をご紹介したいと思います。
手術と違い、解剖では活動性の出血がないため、手術道具で使うような繊細な道具は比較的多くはありません。
早速みていきましょう。
【切る道具】
・メス
・解剖刀
・剪刀(はさみ)
・肋骨剪刀
【掴む道具】
・有鉤/無鉤鑷子(ピンセット)
・有鉤/無鉤鉗子
・骨鉗子
【計る道具】
・定規
・秤
・ゾンデ
・ノギス
・角度計
【その他】
・木枕
・解剖用鋸
・骨膜剥離子
・T字ノミ
・ノミ
・金槌
・保存用ポット
・保存用バケツ
・バット
・杓子(おたま)
・計量カップ
ひとつずつ画像とともにみていきます。
【切る道具】
[メス・解剖刀・脳刀]
これは必須の解剖道具です。
皆さんにとっても1番イメージのある道具かも知れませんね。
ですが、"メス"を使うのは主に皮膚を切開する時くらいです。
"解剖刀・脳刀"は取り出した臓器の断面を見る際に使用します。
ですので、実際の臓器の剖出には"剪刀"(はさみ)を使うことが殆どなのです。
[剪刀](はさみ)
前述の通り、実際の解剖では"剪刀"を使うことがとても多いです。
メスといった片刃器はどうしても細かすぎますし、かえって危ないですからね。
私は扱いやすくかつ安全な剪刀を専ら使いますね。
綺麗な断面を確認する際には"剪刀"ではなく"片刃"を使います。
[肋骨剪刀]
心臓を確認するためには、肋骨(と胸骨)を外さなければなりません。
その際に使用するのが肋骨剪刀です。
海外では後述の解剖用鋸を使用していたりしますね。
【掴む道具】
[有鉤/無鉤鑷子](ピンセット)
こちらも頻繁に使います。
"セッシ"と呼びますが、ピンセットのことです。
鈎がついている"有鉤鑷子"と、鈎のついていない"無鉤鑷子"があります。
前者が鈎が付いているおり滑りにくいため、基本的にこちらを使用します。
キズが付いてはいけないシーンでは、後者の"無鉤鑷子"が使用されます。
[有鉤/無鉤鉗子]
"カンシ"と呼びます。
臨床では"ペアン"や"コッヘル"なんて呼ばれたりしますね。
鑷子と同様、"鉗子"も掴んだりする際に使用され、有鉤/無鉤があります。
"鉗子"では"止め"が付いているので、噛んだ状態で保持できます。
[骨鉗子]
この鉗子の使用頻度はそこまで高くないですが、力を入れて把持する必要がある際に使用します。
文字通り骨が掴みやすいです。
【計る道具】
[定規]
臓器の大きさを測るために当然必須です。
金属製のものもあれば、ペラペラのものもあります。
写真撮影の際には必ずスケールを入れる必要があります。
[秤]
こちらも臓器の重さを量るために必要です。
通常の載せるタイプの"秤"ではなく、吊るすタイプ"秤"もあります。
[ゾンデ]
細い棒ですね。
これは穴の深さや開通具合を確認するために使用されます。
いろいろな太さや長さのものが用意されています。
[ノギス]
太さを図る際に必要です。
特に硬さのある骨を計測する際に力を発揮します。
[角度計]
こちらも骨の角度を図る際などに使用されます。
【その他】
[木枕]
文字通り、木の枕です。
枕を使用することで頭が少し上を向くので、頭の傷などを観察する際に有用です。
ゴムタイプの"枕"もあります。
[解剖用鋸]
開頭する際に使用されます。
電動です。
前述のように、海外では肋骨を外す際にもこちらを使用します。
[T字ノミ・ノミ]
開頭の際に使用します。
"T字ノミ"は文字通り「T字のノミ」で、ひねる操作のためのハンドルが付いています。
[金槌]
上記の"ノミ"とセットで使用されます。
当然ですが、こちらも解剖用のものです。
[骨膜剥離子]
骨を覆っている薄い膜である"骨膜"を剥がす際に使用します。
小さな骨折などは骨膜があると分かりません。
綺麗に骨膜を除去するために骨膜剥離子が必要になってきます。
[保存用ポット・保存用バケツ]
ホルマリン保管のために使用します。
ホルマリンは有害物質であるため、きちんと密閉できるものを使用する必要があります。
[バット]
解剖中、取り出した臓器を一時的に載せておくために使用します。
[杓子](おたま)
血液や貯留した液体を掬うために使います。
後述の"計量カップ"とともに液体量の測定を行います。
[計量カップ]
血液を始めとする液体量の測定のために使います。
様々なサイズがあります。
多量腹水の際は数リットルもの大きな計量カップが必要となることもあります。
以上、簡単な紹介でしたが、こんなところでしょうか。
細かく言い出すと、他にも口を細かく観察する際に使用する"開口器"や、最後に縫う際に必要となる"縫合針・縫合糸"などもあります。
いろいろな道具を駆使して、法医解剖は行われているのです。