今回は法医学でもよく出てくる"充血"と"鬱血"(うっ血)の違いについて書いていきたいと思います。
日常生活ではしばしば混同されがちですが、両者は病理学的には明確に違います。
【充血】:動脈血の増加。動脈の拡張による。ex. 結膜充血...etc
【うっ血】:静脈血の増加。静脈血流のうっ滞による。ex. 肺うっ血...etc
詳しくみていきましょう。
血液は全身を駆け巡っています。
動脈血として全身に酸素や栄養を送り届け、静脈血として二酸化炭素や老廃物を回収する...。
毛細血管レベルではその移行が起きており、主に舞台はここです。
これを踏まえた上で話を進めていきます。
『充血』
"充血"は動脈が拡張することで、動脈内を流れる動脈血が増えることで起きます。
この際、出口である静脈は通常運転なので、相対的に動脈血が溢れてしまいます。
この状態が"充血"です。
『うっ血』
一方で、"うっ血"では、出口である静脈において何らかの影響で流れが悪くなってしまい、渋滞した静脈血が相対的増えてしまうことで起きます。
鬱血の"鬱"の字からも、うっ滞(鬱滞)の状況が分かると思います。
とは言え、実際は肉眼的に"充血"と"うっ血"を区別するのは難しいです。
結局正確なことを言うには顕微鏡で確認する必要があると思いますね。
ちなみに、それでは「"動脈"において何らかの影響で流れが悪くなるとどうなるのか?」
...これは"虚血"と言います。
入り口から流れが悪くなるので、当然その先の流れが全て悪くなってしまいます。
従って、"充血"や"うっ血"と比較してもより重篤になり得る病態と言えます。
ということで、今回は簡単ですが、"充血"と"うっ血"の違い、そして"虚血"について書きました。
日常では両者を混同しようが何ら問題はありませんが、法医学者は専門家として法廷に立つこともあります。
そのため、言葉の定義や使い方が適当ではいけません。
だからこそ、「法医学者は細かい!」と言われてしまうのでしょうね...。