102E41
身元不明の中年男性.公園のベンチで意識がもうろうとしていたため搬入された.体温37.5℃.脈拍52/分,整.血圧170/110mmHg.外傷はなく,画像診断および各種検査の結果,脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血と診断され,治療が施されたが,来院3時間後に死亡が確認された.
対応として適切なのはどれか.
a 保健所に通報する.
b 死体検案書を交付する.
c 死亡診断書を交付する.
d 司法解剖の依頼をする.
e 警察に遺体を引き渡す.
正答は【c】です。
[a] 誤り。ご遺体に関する通法(届出)先として保健所が挙がるのは一部感染症を診断した場合などです。本事例ではそのような感染症に関連した死亡とは判断できないため、保健所への通法は不適です。
[b] 誤り。
[c] 正しい。本事例は、生存中に"脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血"と診断し、それに対する治療も行った上で、同疾病によって亡くなっています。このため、「自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡したと認める場合」に該当するため、"死体検案書"ではなく、搬送先病院の医師による"死亡診断書"の交付が適切です。
[d] 誤り。問題文からは「異状を認めた」もしくは異状を疑うような記載はありません。従って、あえて警察に届け出る必要はないと思われ、よって司法解剖となる流れには乗りません。ちなみに、司法解剖を依頼するのは警察側であり、医師ではありません。
[e] 誤り。[d]の解説の通り、「異状あり」と判断していない以上、あえて警察に届け出る事案ではなさそうですので、ご遺体の引き渡しも不要です。
「救急搬送された患者さんが治療の甲斐なく亡くなった」という臨床問題です。
救急医の先生であれば、よく経験する臨床パターンだと思います。
ここでの分かれ道は、やはり「ご遺体に異状があると認められるか?」になってきます。
そして、それを実際に大きく左右する要素が「死因が分かっているか?」だと思います。
本事例では、生前にはっきりと「脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血」と診断しています。
おそらく。今回の問題ではこれを"内因性"と判断しているいうことなのだと思います。
(個人的には「その"脳動脈瘤破裂"は外因性を否定できるのか?」と気になりますが...)
ですので、「身元不明・屋外で発見」という少し気になる状況であっても、異状なしと判断して「死亡診断書の交付でOK」ということのなのでしょうね。
ただし実際の臨床現場では、"身元不明"ということですし、おそらくこの搬送先病院の医師は警察に届け出ることになると思います。
だって"名前"すらわからないですしね。
確かに、身元不明のまま死亡診断書を交付すること自体は可能ではあります。
もしそのように身元不明のまま死亡診断書を交付する場合は、当然その後の書類提出や火葬等を行う身元引受人がいない(→不明)わけですよね。
ですので、全ての業務を"役所"がやってくれることになります。
死亡診断書も最終的には"役所"へ交付することになります。
こういったイレギュラーな流れも嫌って、臨床現場の先生方は実際のところはおそらく警察に届け出ていると思います。