今回は実際に医学部に入学し、その上で法医学に進みたいと思っている人に向けた記事です。
以前にも関連記事を書いていますので、そちらもよろしくお願いします。
[参考記事:法医学者になるには]
[参考記事:法医学と臨床研修]
法医学教室は各都道府県の大学に少なくともひとつは存在するわけですが、その中で『どこの法医学教室を選べばいいのか?』という悩みは必ず出てくると思います。
これは多くの法医学を目指す医学生さんにとってきっとあるあるでしょう。
私もそうでした。
結論から言いますと、これに関しては一概に言える答えはありません。(※というか、あってもここには書けません)
しかし、唯一言えるのが、【まずは在籍大学の法医学教室の先生に相談してみること】です。
これについて、法医学の特殊性の観点も踏まえ、今回は書いていきたいと思います。
【自学の法医学教室に相談してみる】
『これを無くして法医学の世界に足を踏み入れることは出来ない』と言っても過言ではありません。
というのも、『それ以外に法医学の窓口がない』からです。
法医学に足を踏み入れようと思うと、まずは必ずどこかの大学の法医学教室に相談することになります。
仮に事前に連絡を入れた上だとしても、それ以外に全く素性の分からない方がいきなり在籍大学以外の法医学教室の門を叩いてきたら、我々の方が身構えてしまいます。
法医学はご遺体を扱う分野でもありますので、やはり「"きちんとした"人か?」という点は我々が最もナーバスになっているところですから。
そういうことを踏まえると、最も身近で窓口になり得るのが『自分の通う大学の法医学教室』になるわけですね。
大学で法医学の講義も受けているのでお互いの顔なども分かりますし、医学生さんにとってもそうですが、我々にとってもそれは同じです。
やはり素性の分かる安心感がありますよね。
その上で、他大学の法医学教室にも相談してみるという順序になるでしょうか。
と言いますか、全く縁もゆかりもない法医学教室をいきなり訪ねてきたら、私は『まずは身近なご自身の法医学教室には相談してみたら?』とアドバイスしてあげたくなります。
むしろ「そこを避けた理由が何かあるのか?」と勘ぐってしまうくらいです。
同じ大学の医学生さんであっても「"きちんとした"人か?」というのはすごく重要視しています。
実際に"変な"人がいるのも事実ですからね...。
「解剖がしたいんです!」
「死体に興味があります!」
「法医学にしか興味がありません!」
「事件とか扱うんですよね!?」
こういった方はおそらくどこの法医学教室でも丁重にお断りすることになるかと思います。
逆に我々の法医学教室に来てくれた素晴らしい医学生さんには、ウザがられないくらいの良い塩梅で全力のリクルートを私はしていますが!笑
以上が『ご自身の法医学教室に相談してみる』というのが最も重要と思う理由です。
ここまで神経質になるのは、前述の"法医学分野で扱う対象"というのもありますが、『法医学は狭い』というのも一因としてあると思っています。
「日本の法医学者は140-150しかいない」なんて巷では言われていますよね。
これは認定医の数なので、実際はさすがにそこまでではありませんが、それでもかなり狭い世界であるというのは間違っていません。
学会規模で考えても、こんなに少ない人数(会員数:1240人)で日本の法医学を回していると思うと、その現状は理解できるかと思います。
法医学は、良くも悪くも横のつながりが強くもあります。
学会後の懇親会で、新しく入った大学院生を紹介する法医学者を目にすることも少なくありません。
どこにどういう子が入ったか?には興味があります。(私だけかも知れませんが笑)
狭い世界なので、もしかしたら将来同じ職場で働くことになるかも知れませんし。
こうやって、そういった場所での出会いで法医学としての人脈が広がっていくんですね。
教室に関しても同様で、他の医学系教室に比べると、各大学の法医学教室の教室員は決して多くないです。
なので、今後教室を出入りすることになる医学生さんが「どのような人か?」というのは教室の雰囲気や運営上小さくない要素ですし、どうしても少なからず気になるというのはあると思います。
ということですが、冒頭にも書いたように、皆さんへは
『まずは自分の在籍する法医学教室に相談する』というのが最も伝えたいメッセージでした。
次の記事では「大学毎に何が違うのか?」という点に絞って書きたいと思います。
よろしくお願いします。