SIDS(乳幼児突然死症候群)

今回のテーマは乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)について書いていきたいと思います。

※この疾患はまだ不明な点も数多く、この記事内容についてもあくまで一個人が書いた記載であって内容の保証はいたしませんことを改めてご理解ください。



乳幼児突然死症候群(以下"SIDS"と呼びます)は文字通り乳幼児が突然にして亡くなる疾患です。

それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない、原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群

という厚生労働省SIDS研究班の定義がよく使われています。

『死亡状況調査・解剖検査が必要である』ということから、その診断においては臨床医だけでなく我々法医学や警察機関との連携が求められてくる疾患と言えます。


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出生の4000〜7000人に対して1人程度の割合で、0歳児の死亡理由の第3位を占めています。

1歳未満、特に生後2〜4ヶ月の児に比較多く、統計的には差がありませんが男児にやや多いと言われます。

そういう意味では"乳児突然死症候群"と呼ぶ方が正確なのかも知れません。


リスク因子として、うつぶせ寝、(周囲の)喫煙、人工乳、高温環境などが挙げられます。

また海外では、

・ちゃんとしたベッドで寝かせる (ベビーベッドなど)
・固めのマットを使用する
・添い寝は避ける、同じベッドで寝ない (でも寝室は同じにする)
・おしゃぶりを使用する
・ベッド内には何も置かない
・厚いブランケットを使わない、厚着させない

などを推奨しています。


根本的には『原因が不明』であるため、他の死因の可能性を否定した上での除外診断となります。

"日本SIDS・乳幼児突然死予防学会"が出している診断の手引きに『鑑別が必要な疾患・病態』というのが挙げられていますが、これ↓だけあります。

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その中でも法医学的には、このSIDSは"窒息"(特に鼻口部閉塞や吐乳の吸引による)と区別が極めて困難なのが現実です。

実際のところは、死亡していた状況や臨床経過、発育歴、既往歴、、そして解剖所見を加味した上で、執刀医がどう判断するか?というところになるかと思います。


SIDSと診断されると基本的には病死(→内因死・内因性急死)として扱われますが、窒息死では外因死と判断され、場合によっては虐待やの管理責任問われる可能性すら出てきます。

だからこそ、冒頭にも書いたように『医療機関-法医学教室-捜査機関』が連携し合って適切な診断にあたる必要があると感じますね。



いうわけでSIDSについて書きました。

医学の発達した現代においても難しいテーマだと個人的には感じております。

更なる研究によって少しでも病態解明が進んでいくことを祈るばかりです。