第98回医師国家試験 I問題 問24 [98I24]

98I24
45歳の男性.一人暮し.4月のある月曜日の午後2時ころ,無断欠勤を心配した会社の同僚が訪問し,ベッドにうつ伏せで死亡しているのを発見した.5年前に会社の定期健康診断で高血圧と尿糖とを指摘されたが放置していた.発見の3時間後に行われた死体検案時の死体所見:身長180cm,体重86kg.暗紫赤色死斑が死体前面に高度に発現し,指圧で退色しない.背面は蒼白である.死体硬直は全身の諸関節におよんでいる.両眼は閉じ,角膜は中等度混濁し,左右同大の円形瞳孔を透見できる.直腸内温度は27℃(室温16℃)である.腹部に腐敗による変色はない.死体の外表に創傷を認めないが,口周囲に多量の吐物を認める.
推定死亡時刻として最も適切なのはどれか.

a 発見前日の午前11時ころ
b 発見前日の午後5時ころ
c 発見前日の午後11時ころ
d 発見日の午前5時ころ
e 発見日の午前11時ころ




正答は【d】です。

[a][b][c][e] 誤り。
[d] 正しい。 直腸温法で考えます。検案時刻は午後5時(午後2時の3時間後)です。その時点での直腸内温度は室温には一致しておらず27℃となっています。死後1時間あたり約0.8℃ずつ体温は低下しますので...

( 37.0 ー 27.0 ) ÷ 0.8 = 12.5

従って、検案から約半日(12.5時間)前に死亡したと考えられます。よって選択肢[d]である"発見日の午前5時"が正答です。



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今回の問題では、直腸温が室温に一致してしまうほど死後からの時間が経っていないので"直腸温法"で容易に解けます。

万が一、直腸温が室温に一致してしまっていた場合は、その他各検案所見から推定していかなければなりません。


ちなみに、今回の他の検案所見をみてみると、、、

・死斑は高度に発現する
・死斑は指圧で退色しない
・死体硬直は全身の諸関節におよんでいる
・角膜は中等度混濁する
・瞳孔は透見できる
・腐敗による変色はない

半日後の死後変化としては、どれも大体はOKです。

"死斑の固定"がやや半日にしては早いようにも思えますが、他の所見も加味すれば許容範囲でしょう。



しかし、職業柄、文章問題をみると問題以外の箇所にも注目してしまいます。

「この男性は何故なくなったのか...?」


・壮年
・高血圧や尿糖の既往
・口周囲の多量の吐物

死斑も高度ですし、やはり心臓性急死は疑われますが、、、

結論から言うと分かりません。

高血圧や糖尿病の緊急症かも知れませんし、吐物による窒息かも知れません。

壮年ですから、ひょっとすると青壮年急死症候群や(遺伝性)致死性不整脈といった可能性もあります。

もちろん、薬物中毒だって考えられます。


問題文の書きぶりから判断すると、この後は検案医が「異状なし」と判断して検案書を書いて終わりになりそうですが、(※多量吐物を異状と判断するか?)

法医学者としては解剖までしっかりと行って死因を究明したいところです...。



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