第99回医師国家試験 C問題 問24 [99C24]

99C24
5ヵ月の乳児.早朝ぐったりしているのに母親が気付いたとして救急車で搬入された.意識はなく対光反射も認められない.脈拍は触れず,心・肺は停止している.直腸温は35.0℃.全身にチアノーゼ,打撲傷および紫斑を認める.30分間心肺蘇生を試みた後,死亡を確認した.
次に行うのはどれか.

a 母親からの成育歴の聴取
b 全身X線単純撮影
c 病理解剖
d 死亡診断書の作成
e 警察への届出




正答は【e】です。

[a] 誤り。個人的には明確に誤りとも言えない気はするのですが、、、一般診療の上で児の生育歴を聴取することは必須ですし、その意義は法医実務でも同様です。ただし後述のように優先順位としては"届出が先"ということなのだと思います。

[a] 誤り。画像検査による全身検索も、死後の対応という意味では決して誤りではないと思います。実際、多くの臨床病院で死因究明のための死後CT検査等が行われています。ただしあくまで「届出を出した後で」というメッセージなのでしょう。

[a] 誤り。全身に打撲傷が認められることから、やはり病理解剖に進めるのではなく、まず異状死体の届出を行うべきだと思います。届け出た後、必要であれば法医解剖を行い、そうでなかった場合に病理解剖は検討されるべきだと思います。

[a] 誤り。死亡診断書を作成するケースは「自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡したと認める場合」ですが、この事例は当てはまりません。従って、対応医師による死亡診断書の作成は不適です。死体検案書の作成についても、きちんと異状死体の届出をした後、その後の流れに沿って(対応医師による)作成は検討されます。

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[e] 正しい。上記各選択肢の解説の通り、既に全身の打撲傷を認識しているわけですから、"次に行う"行動としては"警察への届出"が適切と言えるでしょう。



臨床問題です。

しかも、現実にあり得そうなケースで問われています。

そういう意味でも、「こういうケースに出会ったら、きちんと警察に届け出ましょうね」というメッセージが込められているのだと思います。


とは言え、選択肢[a]にも書いたように、単なる対応としては「生育歴の聴取」も誤りではないと思います。

「『異状あるかどうか?』を知るために全身のX線画像検査を行うんだ!」という気持ちも分かります。

確かに、打撲傷自体は不慮の転倒や衝突でも起こるわけですが、

やはり"全身の"打撲傷とまで言われると、この時点で「異状あり」と判断するのが妥当だとも感じます。


要は「少しでも異状がありそうなら、まず警察に届け出ましょう」ということなのだと思います。

実際に私が臨床医として働いていた頃も、警察へ検視依頼をした経験は何度もあります。

ちなみに、最終的に「事件性なし」との判断になることが殆どでした。

ですが、たとえ些細なことで異状が疑った場合でも、仮にそれが取り越し苦労であったとしても、

警察の方々は「先生方が気になる事案であれば、当然必ずきちんと対応します」と嫌な顔一つせず丁寧に調べてくれていましたよ。

もちろん、その中で犯罪死が疑われるとしてご遺体を署に持ち帰ることもありましたし、

そうやって医師と警察が協力して、世の中の犯罪の見逃しを防いでいると言えます。


結局のところ、国試的には[a][b][c]などの対応は、警察に届け出た後の対応と考えた方がよさそうですね。



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