今回はに圧力に関連した死亡について書いていきたいと思います。
具体的には①減圧症 ②スクイーズ ③高山病 の3つを取り上げます。
①減圧症
"減圧症"は、潜函病・ケイソン病(ケーソン病)、潜水病とも呼ばれ、これらを含んだ言葉です。
潜函とは地下の中で工事する際に、内部を高圧にし地下水が浸水しないようにする箱のことです。
潜水病とも呼ばれますが、必ずしも潜水中にのみ起こるわけでもありません。
高圧環境下では通常よりも多くの窒素が血液に溶け込み過飽和状態になります。
問題になるのはそれが、通常の気圧に戻った時です。
『血中に溶けていた窒素が呼吸で排出しきれなくなると、その血中窒素が気泡化し、その窒素ガスが様々な障害を来すこと』
これが減圧症の機序です。
ゆっくり浮上すれば呼吸によって窒素が徐々に排出されていくので減圧症は起こりにくいのですが、急に上昇してしまうと排出しきれずに症状が出ます。
症状が出るとパニックになって余計に急いで水上に上がりたくなるので、それがさらに悪影響を及ぼしてしまいます。
また潜水頻度が多いと起こりやすく、職業ダイバーに多いとされます。
臨床症状としては、窒素ガスが血管を詰めて皮膚障害や関節痛・筋肉痛、感覚・運動障害、末梢循環不全を来たします。
また気泡化したガスが血管内皮細胞を障害し、凝固系に異常を来すという別の側面もあると言われます。
骨を栄養する血管を閉塞した場合、大腿骨などの骨が壊死してしまう"潜函病性骨壊死(減圧性骨壊死)"という病気もあります。
これらの症状はほとんどで浮上した直後〜1,2時間以内に発症します。
また息こらえしながら上昇に伴い『肺胞が膨張しすぎて破裂し、その亀裂からガスが動脈内に入り込み脳梗塞等を来す』"動脈ガス塞栓症"という疾患もあります。
"減圧症"と"動脈ガス塞栓症"を合わせて"減圧障害"と呼ぶこともあるそうですね。
実際は両者の区別は難しいようですが...。
また減圧症に関連して、潜水に伴う圧外傷に"肺胞出血"や"耳出血・鼓膜損傷"などを併発することがあります。
潜水時には胸腔と肺胞の間に圧較差が生まれて、水深35〜40m以上になると肺胞出血の危険性が出てくると言われますが、水深5m程度でも血痰を起こしたという報告もあるようです。
"耳出血・鼓膜損傷"は耳抜き不良が原因のひとつで、外リンパ瘻などが起こると予後不良とされます。
②スクイーズ・潜水夫病
スクイーズはまさにこの画像のような状況で起こります。
このような潜水服の場合、頭部は潜水具によって水圧から守られていますが、体は水圧によって圧力を受けます。
そうすると、相対的に低圧である頭頚部に血液などの体液が集中し、頭部のうっ血や出血、疼痛、脳浮腫を来すというわけです。
③高山病
高山病:これは高値による低酸素が主な原因で、他にも前述の減圧症も関係してきます。(低体温、脱水、低血糖等も悪影響を及ぼします)
山上は空気が薄くまた気圧も低いですからね。
標高2500〜3000m以上、6〜96時間で発症すると言われています。
なので、高山病になった人が携帯酸素を吸っている姿をよく見かけるんですね。
軽症では頭痛や嘔気・嘔吐、睡眠障害、呼吸困難などで済み、それら症状も数時間〜数日で改善しますが、重症例では脳浮腫や肺水腫といった疾患を引き起こし、場合によっては死に至ることもあります。
それぞれを"急性高山病"・"高地脳浮腫"・"高地肺水腫"と区別したります。
以上3つが法医学で主な圧力に関連した疾患です。
実際のところ法医学で出会うことは少なく、もしかすると臨床の方が出会う機会があるのかも知れませんね。
あとは爆死(爆発や爆風による外傷)などもありますが、かなり特殊なので今回は割愛しました。
また機会があれば書きたいと思います。