第106回医師国家試験 E問題 問30 [106E30]

106E30
医師の届出義務と関連する法律の組合せで誤っているのはどれか.

a 異状死体の発見 - 医師法
b 結核患者の診断 - 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〈感染症法〉
c 診療所の開設 - 医療法
d フグ中毒患者の診断 - 食品衛生法
e 麻薬中毒者の診断 - 刑法




正答は【e】です。


[a] 正しい。異状死体の届出は"医師法"に規定されています。医師法 第21条「医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。

[b] 正しい。結核患者の届出は"感染症法"に規定されています。感染症法 第12条「医師は、次に掲げる者を診断したときは、厚生労働省令で定める場合を除き、第一号に掲げる者については直ちにその者の氏名、年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項を最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければならない。」※結核は2類感染症に指定されています。

[c] 正しい。診療所開設の届出は"医療法"に規定されています。医療法 第8条「臨床研修等修了医師、臨床研修等修了歯科医師又は助産師が診療所又は助産所を開設したときは、開設後十日以内に、診療所又は助産所の所在地の都道府県知事に届け出なければならない。

[d] 正しい。フグ毒中毒患者の届出は"食品衛生法"に規定されています。食品衛生法 第63条第1項「食中毒患者等を診断し、又はその死体を検案した医師は、直ちに最寄りの保健所長にその旨を届け出なければならない。

[e] 誤り。麻薬中毒者診断の届出は"麻薬及び向精神薬取締法"に規定されています。麻薬及び向精神薬取締法 第58条の2第1項「医師は、診察の結果受診者が麻薬中毒者であると診断したときは、すみやかに、その者の氏名、住所、年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項をその者の居住地の都道府県知事に届け出なければならない。



医師の届出とその根拠法に関する問題です。

[d]以外の選択肢は既出ですので、問題自体はそこまで難しくなかったと思います。


"食品衛生法"について少しだけ補足します。

そもそも「食中毒とは何か?」ですよね。

同法の条文に食中毒患者についての記載があります。

【食中毒患者】:食品、添加物、器具又は容器包装に起因する中毒患者又はその疑いのある者。

イメージとしては、食べ物・食品だけに起因したものを想像しがちですが、実は添加物や器具、容器包装までも含んでいるんですよね。

もちろん"フグ毒"も食中毒に該当するわけです。

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そして、この"食中毒"を診断した場合は"直ちに"最寄りの"保健所"に届け出なければなりません。

・直ちに (※ただし食中毒の場合は24時間以内とされる)
・(最寄りの)保健所

このあたりは試験にも出題しやすいですね。


ちなみに、届出事項としては、下記の5項目です。

①医師の住所及び氏名
②中毒患者若しくはその疑いのある者又は死者の所在地,氏名及び年齢
③食中毒の原因
④発病年月日及び時刻
⑤診断又は検案年月日及び時刻

ただし国試的にはここまで覚える必要はないと思います。



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