110F1
医師の届け出義務が医師法に規定されているのはどれか.
a 異状死体
b 食中毒患者
c 被虐待児童
d 麻薬中毒患者
e 医薬品による副作用
正答は【a】です。
[a] 正しい。"異状死体の届出"は、医師法第21条に規定されています。「医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。」
[b] 誤り。"食中毒患者の届出"は、食品衛生法第63条第1項に規定されています。「食中毒患者等を診断し、又はその死体を検案した医師は、直ちに最寄りの保健所長にその旨を届け出なければならない。」
[c] 誤り。"被虐待児童の通告"は、児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法) 第6条第1項に規定されています。「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。」
[d] 誤り。"麻薬中毒患者の届出"は、麻薬及び向精神薬取締法 第58条の2第1項に規定されています。「医師は、診察の結果受診者が麻薬中毒者であると診断したときは、すみやかに、その者の氏名、住所、年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項をその者の居住地の都道府県知事に届け出なければならない。」
[e] 誤り。"医薬品による副作用の届出"は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法・医薬品医療機器等法) 第68条の10第2項に定められています。「薬局開設者、病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者又は医師、歯科医師、薬剤師、登録販売者、獣医師その他の医薬関係者は、医薬品、医療機器又は再生医療等製品について、当該品目の副作用その他の事由によるものと疑われる疾病、障害若しくは死亡の発生又は当該品目の使用によるものと疑われる感染症の発生に関する事項を知つた場合において、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると認めるときは、その旨を厚生労働大臣に報告しなければならない。」
届出義務に関する問題です。
法律が関わってきますが、既出の法律が殆どであるため、問題自体はそこまで難しくありません。
選択肢[e]の"薬機法"は、かつて"薬事法"と呼ばれていた法律ですね。(未だに"薬事法"と呼ぶ先生はいますが...)
医薬品等による副作用・感染症・不具合の報告は、医療関係者の義務となっています。(参考サイト:PMDA)
我々法医学者にも、実は同法第68条の10第2項が関係してきます。
・死亡が医薬品等の副作用によって死亡が起きたと知った
・保健衛生上の発生もしくは拡大の防止が必要である
この2点を満たす場合は、厚生労働大臣にきちんと報告する"義務"があります。
(→ 実際は所定の手続きを経て"独立行政法人医薬品医療機器総合機構法"に報告します)
この規定は医療関係者としてきちんと頭に置いておきましょう。