都道府県別の解剖率

"日本の解剖率"と"世界の解剖率"と来て、最後は"都道府県別の解剖率"です。

前回の記事で①"全死亡者"比解剖率 ②"警察取扱死体比"(≒異状死体比)を取り上げましたが、これらの数字は『同じ国の中でも地域によって大きく違う』という話を書きました。

日本国内でも地域によってまちまちなので、今回はそれを知ってもらえればと思います。



厚生労働省のサイトに都道府県別の令和元年の解剖統計があったので、それに都道府県別死亡者を加えて表にしました。

autopsy-rate_todouhuken.jpg

画像が小さいので、是非拡大してご確認ください。


①の全死亡者比解剖率はどの都道府県も大体10%程度に収まっています。

東京都が最も高く17.9%で、大分県が最も低く8.0%でした。

しかし、この数字自体は『高ければ良い、低ければ悪いというものではない』というのは前回書いた通りです。


続いて②の警察取扱死体(表では死体取扱数)比解剖率です。

神奈川県が5.14%と最も高く(次点で兵庫県の3.31%)、広島県が0.12%で最も低いです。

『その他の解剖 ≒ 行政解剖』ということで、この結果は監察医制度によるものが大きいと言われています。

以前書きましたが、東京都・大阪市・神戸市は監察医制度が運用されており、横浜市もつい最近まで監察医制度が導入されておりました。

また沖縄県も独自に監察医制度に類似した死因究明制度が運用されており、それが数字に表れていると言えます。

ただし"犯罪捜査"という観点から言いますと、行政解剖は犯罪性がないご遺体に対して行われる解剖ですので、行政解剖を数に入れて②の解剖率を議論するのは間違っている気もします。

もちろん解剖の目的はそれだけではありませんが...。



以上のように、①の全死亡者比解剖率はある程度ばらつきは少ないですが、②の警察取扱死体比解剖率は都道府県ごとにかなりのばらつきがあります。

これには各都道府県に在籍している法医学者の人数の関係でなかなか増やせないという事情もあると聞いています。


皆さんはこの数字をどう感じますか?

是非一度考えてみてください。