第111回医師国家試験 E問題 問21 [111E21]

111E21
医療関連死に含まれないのはどれか.

a 脂質異常症治療中の自殺
b 負荷心電図検査中の心室細動による死亡
c 入院食誤嚥後の急性呼吸不全による死亡
d 造影剤投与後のアナフィラキシーショックによる死亡
e 脳梗塞後のリハビリテーション時の脳出血による死亡




正答は【a】です。

※ここでの"医療関連死"(=診療関連死)は、日本法医学会が提唱する「診療行為に関連した予期しない死亡、およびその疑いがあるもの」として説明を進めていきます。


[a] 誤り(=含まれない)。問題文だけでは"自殺"と"脂質異常血症治療"の関連性・因果関係ははっきりしません。他の選択肢の中では、最も"医療関連死"とは言い難いと思われます。

[b] 正しい(=含まれる)。「診療行為中、または診療行為の比較的直後における予期しない死亡」であり、"医療関連死"と考えられます。

[c] 正しい(=含まれる)。入院管理上(→食事提供)の問題が疑われるケースであり、"医療関連死"の可能性があります。

[d] 正しい(=含まれる)。「診療行為自体が関与している可能性のある死亡」であり、"医療関連死"と考えられます。

[e] 正しい(=含まれる)。リハビリテーションという「診療行為自体が関与している可能性のある死亡」であるため、"医療関連死"と判断できます。



医療関連死(診療関連死)に関する問題です。


正直なところ、"医療関連死"の定義が曖昧です。

前述のように、この解説においては、

【医療関連死】:「診療行為に関連した予期しない死亡、およびその疑いがあるもの

として扱っています。

日本法医学会は、更に具体的な事例として、

・注射・麻酔・手術・検査・分娩などあらゆる診療行為中、または診療行為の比較的直後における予期しない死亡。
・診療行為自体が関与している可能性のある死亡。
・診療行為中または比較的直後の急死で、死因が不明の場合。
・診療行為の過誤や過失の有無を問わない。

を規定しています。


ここではその賛否両論については触れませんが、

「これら類型を(医師法第21条の)異状死体として届け出るべきだ」

と法医学会が言ったものですから、臨床から大批判を受けたわけですね...。



さて、すったもんだあって、現在では"医療事故調査制度"という制度が始まっています。


医療法 第6条の10第1項 病院、診療所又は助産所の管理者は、*医療事故が発生した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なく、当該医療事故の日時、場所及び状況その他厚生労働省令で定める事項を第6条の15第1項の医療事故調査・支援センターに報告しなければならない。

*【医療事故】:当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であつて、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたものとして厚生労働省令で定めるものをいう。

第6条の11第1項 病院等の管理者は、医療事故が発生した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、速やかにその原因を明らかにするために必要な調査を行わなければならない。


この"医療事故(死)"は、前述の日本法医学会の提唱する"医療関連死"の定義よりも狭い範囲となります。

もっと具体的に書くと、"医療事故調査制度"では、

・医療に起因しない、または起因すると疑われない死亡や事故は医療事故(死)"に該当しない
・管理者(≒院長)が予期していた死亡や死産は"医療事故(死)"に該当しない

ということになります。

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日本医療安全機構HPより

日本法医学会の定義にも批判はありますが、この定義もこれはこれで遺族を中心に批判があったりします。
(同じくここで賛否両論については触れませんが...)


ただ国試としては、常識的に「医療に関連した(またはその疑いがある)死亡」と捉えても、正答自体はそこまで難しくありません。

やはり選択肢[a]は"医療に関連した死亡(自殺)"とは言えなさそうですもんね。


いろいろ書きましたが、ここはあまり深く踏み込まず、サラッと回答できれば問題ないかと思います。



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