法医学の学会

今回は法医学にまつわる"学会"について書いていきます。

学会は『学術研究の向上や発達を目的とする団体』のことです。


具体的には会員向けに、

・研究を発表の場を提供する (学会発表)
・学術雑誌を発行する
・セミナーを開催する
・その分野の指針を示す
・認定医や専門医の認定をする

などの業務を行っています。

会員は基本的にその道の研究者であることが原則であり、「これら業務をその道の研究者自身が行っている」というのも学会の特徴です。


法医学のみならず文系・理系を問わず様々な領域で幅広く存在しています。

特に臨床医学においては、その道の専門家の多くが所属する力のある団体となっていたりしますね。

最近制度が大きく変わりましたが、専門医取得のためには所属することが必須であることも参加医師が多い大きな要因かと思います。



さてそんな学会ですが、法医学における学会にもいくつかあります。

その中でも今回は法医学領域の学会で最も大きい"日本法医学会"に焦点を当てます。

また臨床系学会との違いにも着目して書いていきたいと思います。



基本的に法医学に携わる人間は、この"日本法医学会"に所属していると思います。

警察や裁判を始めとする機関と接することが多いですし、やはり「学会に所属している」という"社会的な信頼性"の要素があるからです。
(※所属していない法医学者は信頼できないという意味ではないですし、所属してる法医学者が皆信頼できるという話でもありません)

他の医学系学会でもそういう意味合いもあるかと思いますが、個人的に法医学会は特にその傾向が強い気がしています。

ただそこまで意識して入っている法医学者は少ないでしょうけどね。笑

現実は皆「法医学を専門とするなら当然入っておくか」くらいの気持ちだと思います。



続いて日本法医学会の会員数です。

これは以前の記事「女性法医学者」でもチラッと触れましたが、

会員数:1240人 (@2020.3)

です。


臨床系学会をみてみますと、

日本内科学会会員数:116404 人 (@2021.1)
日本外科学会会員数:40461 人 (@2021.1)

これと比べますと法医学会会員数はかなり少ないことが分かると思います。

しかも、上記の法医学会会員数は医師以外も含んでおり、純粋に法医学医師だけで言えば518人(@2012)ですので...。(※参考記事)



学会発表には"全国集会"と"地方会"があります。

全国集会:日本全国から法医学者が集まる学会発表
地方会:地域ブロック毎の法医学者が集まる学会発表

ですので地方会は比較的こぢんまりしています。

ビルのワンフロアとかで行えることもあります。

というか、法医学会の全国集会にしても母体数が少ないですので、正直なところ臨床系学会の地方会よりも全然小さいです。。

別に小さいから悪いというわけではありませんけどね。

規模が小さくても全国の法医学者が一堂に会しますので、『この会場が"ごにょごにょ"されたら日本は終わってしまうね』なんて冗談もよく?聞かれます。


学会発表でのテーマは"法医学全般"ということで、かなり幅広いのは他の学会と比べて特徴的かも知れません。

直近の学会を見てみましても、

・法病理
・法中毒
・DNA多型・遺伝形質
・歯科法医
・法放射線・画像診断
・賠償科学
・事例報告
・その他
・学生研究発表

の9項目があります。

これこそ『法医学が多方面に渡った幅広い学問である』ことを象徴している気がします。

全国集会規模になりますと、複数の演題が別室で同時並行に行われるのですが、私なんて全ての演題に興味がありすぎて、「どの演題を見ようか?」と毎回迷ってしまいます...。笑

どれも法医学の最先端なので毎回勉強になりますよ。



勉強になるのは学会発表だけではありません。

法医学会は学術雑誌を発行しています。

その名も【Legal Medicine】

近年は表題の通り英語論文のみを受け付ける方針となりました。

これは昨今のグローバル化の影響もありますが、現実的に海外に広く発信しようと思うと、やはり英文であることは必須ですからね。


法医学の学術雑誌というのは全世界的にも多くはありません。

その貴重な一つが日本から発信されているというのは個人的にとても誇れることだと思っています。



その他、法医学医向けに"法医認定医"と"指導医"の認定も行っています。

"認定医"があるとやはり専門家として認識しやすいですし、これを取ってやっと法医学者として一人前・スタートラインといったところでしょうか。

ただ臨床系の(新)専門医制度には含まれていないのが残念なところではあります。



以上、法医学の学会の全容をみてきましたがイメージできたでしょうか。

以前からちょこちょこ書いていますが、"学術研究"というのも法医学者にとって大きな使命です。

その根幹となる学会がこれからも発展していくよう、私も微力ながら支えていきたいものです。