今回は"デートレイプドラッグ"について書いていこうと思います。
皆さんはこの言葉を聞いたことがあるでしょうか。
「聞いたことない」という人は、この記事だけでなく、一度ネットでも本でもきちんと勉強してみてください。
※参考リンク:男女共同参画局 【薬物やアルコールなどを使用した性犯罪・性暴力に関して】
[https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/dfsa/index.html]
特に女性は被害者となることが多いですので、自己防衛のためにも正しい知識をつけておくべきだと思います。
文字をみて分かるように、
"デートレイプドラッグ":『飲み物や食べ物に混ぜることで昏睡状態にさせ、準強姦(準強制性交等)や性的暴力におよぶ目的で使用される薬剤』
のことです。
具体的な薬品名として"フルニトラゼパム"(商品名:サイレース、ロヒプノール(※販売停止))というのが有名ですが、それ以外の睡眠薬や抗不安薬、場合によってはアルコールも"デートレイプドラッグ"となり得ます。
決してある特定の薬剤だけが"デートレイプドラッグ"とされるわけではなく、上記の定義通りその目的や用途で使用される薬剤全般のことを指しています。
また女性だけでなく男性が被害になることも当然ありますし、性的暴力・準強制性交等だけでなく"昏酔強盗"(意識を失っている間に窃盗されること)に使用されることもあるため、世間一般に広く知られるべき言葉だと思います。
日本においては、睡眠薬の一種である"ベンゾジアゼピン系睡眠薬"が飲酒と合わせてよく使われます。
他にはゾルピデム(商品名:マイスリー)、ゾピクロン(商品名:アモバン)、エスゾピクロン(商品名:ルネスタ)などの非ベンゾジアゼピン系睡眠薬も有名です。
これらは臨床でも普通に使用される睡眠薬です。
前述の"フルニトラゼパム"もこのベンゾジアゼピン系統の睡眠薬で、この種の薬剤の中でも催眠効果が強いことが犯罪で使用されることが多い要因だと思います。
内服すると30分も経たないうちにウトウトしてきて寝てしまいます。
実際はアルコールとともに摂取されることが多く、そのために催眠効果が増強されます。
また単に寝てしまうだけではなく、"一過性前向性健忘"つまり『内服した後しばらくの記憶がなくなったりちぐはぐで曖昧・断片的な記憶になってしまう』ことも、被害の発覚が遅れてしまう原因のひとつです。
こういった犯罪目的で使用されるのを防ぐため、2015年からフルニトラゼパムの錠剤に青色の色素を混ぜることで、溶け出すと絵の具のような濃い水色となるように変更されました。
これによって「万が一知らない間に飲み物や食べ物に混ぜられても気付くことができる」というわけですね。
ちなみにフルニトラゼパムを内服後しばらくして亡くなったご遺体を解剖すると、胃や腸の粘膜にもこの色が着色しており、一目瞭然にわかります。(ただし内服したことと、それが死因なのか?は別です)
これらデートレイプドラッグのほとんどが、尿を分析することで成分を検出できます。
法医学実務上でも、ご遺体から採取した尿を簡単に検査できるキットが使用されており、複数の種類の薬剤に対応したものあります。
なので適切に対応することで、さらなる被害を食い止めることができます。
被害を受けたり何か違和感を感じた際には、上記リンクにある連絡先等に連絡・相談してください。
海外でもデートレイプドラッグ問題は深刻で、そういった犯罪目的で使用されやすい薬品が販売停止となったりしています。
とは言え、これらの薬剤は本来患者さんの治療のためのものであり、実際に現在も臨床で使用されているものばかりです。
薬剤自体が問題というよりはやはりその用途に大きな問題があるというのは言うまでもありません。
皆さんがこういったことを知り、そして知識をつけることが被害の減少に繋がります。
また改めて一度勉強してみてください。
法医学者もこの問題に関わる機会が多々あり、いろいろな側面から支援しています。
被害が減ることを心から願っています。