94D1
異状死体届出の必要がないのはどれか.
a 生後5ヵ月の乳児の保育所での突然死
b 高所から墜落した患者のショック死
c 救急来院時の病態不明の心肺停止死
d 交通事故による植物状態に起因する嚥下性肺炎による死亡
e 肝硬変で入院した患者の吐血による窒息死
正答は【e】です。
[a] 誤り(=届出の必要がある)。乳児の死亡は原因が不明なことも多いです。問題文から詳細不明ですが、死亡原因がはっきりしないため異状死体の届け出を要検討される事例だと思われます。
[b] 誤り(=届出の必要がある)。墜落という外傷が起因した死亡であるため、異状死体の届け出が必要であると考えられます。
[c] 誤り(=届出の必要がある)。原因不明の来院時心肺停止(CPAOA)症例は異状死体届出案件と考えてよいと思います。
[d] 誤り(=届出の必要がある)。[b]同様、外因性の死亡であるため、異状死体届出の必要があると考えられます。
[e] 正しい(=届出の必要がない)。診療(入院)中に起きた肝硬変という内因性疾患を起因とした死亡と判明していることから、異状死体の届け出は必要ないと思われます。厳密には"肝硬変"と"吐血"の間に相当レベルの因果関係がなければなりません。
異状死体の届け出に関する問題ですね。(類似問題:85A98, 89A8, 92A11, 93A43)
ここまで来ると、特に詳しい説明も不要かと思います。
異状死体:確実に診断された内因性疾患で死亡したことが明らかである死体以外の全ての死体。
問題文も洗練されてきて、届出不要なケースでは、
・(確実に)診断された〜 → 入院中
・内因性疾患で〜 → 肝硬変
というのが段々と徹底されてきていますね。
もっと正確に「肝硬変で入院中〜」と私はするかも知れません。
ただそうすると「入院中なのに、診ていたその疾患で亡くなってしまったのか!?」という少し残念な臨床経過になるので、問題文としてあまり気持ち良くはありませんね...。
ちなみに、[e]の問題文が"吐血"ではなく"喀血"であればどうでしょう?
"喀血"は「気道からの出血」です。
従って、「肝硬変で入院した患者の"喀血"による窒息死」の場合は、"肝硬変"と"喀血"の間の因果関係が弱いことから、
「確実に診断された内因性疾患(→肝硬変)で死亡したことが明らか」ではなくなるので、つまりは異状死体の届け出が必要となります。
ここまで来ると、引っかけ問題みたいであまり良い問題ではないかも知れません。
異状死体の意味が理解できれば十分かと思います。