前回の記事では『まずは自身の通う大学の法医学教室へ相談を』という話をしました。
それでは【各大学の法医学教室では一体何が違うのか?】
今回はこれについて書きたいと思います。
ある意味、この"違い"を考慮して「どの法医学教室がよいか?」というのを考える人もきっといると思います。
ただ今回挙げた項目が単純に「多いから良い、少ないから悪い」という話では決してないことには十分ご注意ください。
あくまでその教室の特徴の一面であるという認識に留めてください。
大学毎の違いは大きく以下の通りです。
1. 解剖数が違う
2. 論文(研究)数が違う
3. 臨床との距離が違う
4. 教室員の規模が違う
5. 教授が違う
ひとつずつ見ていきましょう。
①解剖数が違う
解剖数というのは、各都道府県、さらには同じ都道府県でも大学によって当然差があります。
それは
・人口の違い
・解剖率の違い
・教室の規模 (医師数の違い)
などに影響されます。
解剖が多いと単純に解剖に接する機会が増えますので、そういった知識は早く習得できると言えるかも知れません。
とは言え、大学院4年間あればどこでも充分学ぶことができると思いますが。
②論文(研究)数が違う
これは"アカデミックさ"にも繋がってくるでしょうか。
医学者は研究をすると最終的に論文にしてその結果を世に送り出すわけですが、その出版された論文の数を指しています。
これは各大学のHPで『業績』として載っていたりすると思います。
また医学生さんでもPUBMEDなどを使ったことがあると思いますので、実際にそこから各雑誌社に跳んで内容を知ることもできます。
和文なら医中誌になりますが、もう最近は専ら「論文は英文」の世の中ですから、PUBMEDを私は強くおすすめします。
もちろん研究には残念ながら出版に至らなかったものもあるわけですし、必ずしもこの数字が全て研究への姿勢を表したものではありません。
ただ客観的な指標としては分かりやすいので取り上げました。
前述のPubmed等を使用してその大学の研究内容を見知ることで、『自分が興味のある分野を研究しているか?』というのを知ることもできます。
「薬毒物について研究したい!」
「DNAについて研究したい!」
のように、専門性のある内容を勉強していきたいのなら、その分野を実際に研究して(論文として出して)いる大学を知ることも有益かと思います。
③臨床(や他分野)との距離が違う
この"距離感"は実際になかなか外から知るのは難しいとは思います...。(挙げといて何ですが、、)
得てして法医学は他分野と距離が出来がちな分野であります。
しかし、近年は臨床法医学であったり、研究のコラボレーションも進んできています。
これは別に研究に限った話でもなく、『定期的に臨床医さんと勉強会やカンファレンスを開催している』などでも計り知れると思います。
多文化交流によって、お互いに高め合っていくということですね。
遠いよりは近い方が断然いいと個人的には思っています。
④教室員の規模が違う
これは単純に「教室全体の規模」という見方ができます。
つまり大所帯かどうかという意味ですね。
ただしこれが良いか悪いか?は一概に言えません。
多ければ(1人当たりの)解剖に触れる機会が少ないかも知れませんし、少ないと逆に密に教育してもらえるかも知れません。
この数字をどう捉えるか?は皆さんの考え方次第です。
あと、個人的にはそれに加えて『同じ大学院生が他にもいるか?』という視点で見るのも重要かと思っています。
自分の"道しるべ"となる先輩大学院生が身近にいるといないのとでは大きく違いますからね。
⑤教授が違う
これは言うまでもないですが...。
法医学でも『教室のトップがどのような人か?』によって、その教室の雰囲気や運営方針は大きく変わります。
先に挙げた①~④もある程度は「教授の違いによる差である」と言っても過言ではありません。
ですので『そこの教授が自分に合うか?』というのはすごく大切です。
いやむしろ、この⑤が何よりも最も重要かも知れません。
大学では教授が退官する・変わるということが割と頻繁に起こります。
自分が大学院の在学中にトップの変更を経験することは少ないとは思いますが、万が一変わるとそれに伴って教室も新たに生まれ変わりますので、『教授の在職年数』というのを知っておいても損はないかと思います。
以上、5つの違いに注目しました。
正直なところ、臨床医学における【入局先・医局選び】と全く同じような観点ではなかったでしょうか。
私は結局同じだと思っています。
なので、周りに相談できる法医学者がいなくても、気心の知れた臨床医の先輩がいるなら『入局の際に何を重視したか?』というのを参考に相談してみてもいいと思います。
もちろんそこから実際に調べるのは皆さん自身になってきますけどね。
今回の項目はあくまで参考に過ぎません。
最終的に決め手はフィーリングだったり雰囲気だったり印象だったり...。
結局は、そういった皆さんの"主観"こそが最も重要な決め手なのではないでしょうか。