法医学には様々なバックボーンをもった人がいます。
・ダイレクトに法医学教室に足を踏み入れた法医学者
・臨床医から転科?してきた法医学者
・弁護士資格を持つ法医学者
・企業や科捜研から鞍替えしてきた法医学者
どんな法医学者であっても、どこかタイミングで当然『法医学に進もう』と思ったわけです。
今回はそんな"法医学者を目指した動機・理由"というのをテーマに書いていこうと思います。
冒頭に書いたように、法医学者にもいろんな人がいます。
そんな様々な法医学者たちがなぜ法医学者を目指すようになったのか?
法医学医(医師)についての話にはなりますが、私が実際に聞いた動機は以下の大きく3つでした。
・臨床医をしていた"思うところ"があった
・臨床医が肌に合わなかった
・元々法医学に興味があった
ひとつずつみていきましょう。
【臨床医をしていて"思うところ"があった】
法医学医ではこの理由が意外に多い印象があります。
法医学では、他科(臨床医)から法医学者に転向してきた先生も割といらっしゃいます。
というか、現代においては臨床医(※研修医を含む)を経験した法医学者が殆どだと思います。
中にはもちろん最初から法医学者を念頭に置いて臨床医として働く人もいます。
しかし、最初は法医学なんて全然考えることなく臨床医を過ごしていて、
『その(臨床医生活)のでいろんな経験をして法医学者になろうと思った』
おそらく皆さんの想像以上にこういう法医学者は多いはずです。
臨床医をしていても法医学に触れる機会はあります。
そしてそのような経験は往々にして普段実践している臨床医学とは大きく違っていると思います。
なので、余計に深く心に刻み込まれるのだと私は思っています。
皆さんにもイメージしやすいのが"児童虐待"などです。
こういった悲惨な事例を経験すると、原因究明や再発防止など"未来への医学"として法医学に出会うこともあるかと思います。
そうした経験や思いが法医学に進む動力になるのかも知れません。
もちろんこれ以外にも、
「臨床医をしていてその中で触れた法医学に魅力を感じて法医学者になる」
こういった先生方は決して少なくないのです。
【臨床医が肌に合わなかった】
こういった理由もしばしば聞きます。
もしかすると、臨床診療科における"放射線科医(読影)"や"病理医"なども似たような動機の先生がいらっしゃるかも知れません。
臨床医はどうしても生きている患者さん相手です。
病院勤務となると、そこにさらに看護師さんや薬剤師さんといった医療スタッフとのコミュニケーションが必要になってきます。
そういった他人との関わり・人付き合いが苦手な場合などで、"法医学"という選択肢が浮かんでくるようです。
ただ個人的に「法医学は他人との関わりが少ないのないか?」と聞かれるとそんなことはない気もします。
法医学は狭い世界なので、教室員ひいては法医学者みんなで協力して運営しなければなりません。
法医学医となると警察や法曹などの専門外の関係者とも接することになります。
そういった意味では、必要以上の能力は必要ありませんが、全く他人と関わることなく法医学者をやれるわけではないことは理解する必要がありますかね。
【元々法医学に興味があった】
これは多くの方がまずイメージする理由かと思いますが、私の周りには意外と多くありません。
『法医学者になるために医学部入るんだ!』と意気込んで実際に医学生になる人は決して多くないということです。(※当然いないわけではありません)
理由ははっきりしませんが、もしかすると『6年間の医学教育の中でその考えが変わってしまうのか...?』と私は睨んでいます。
医学部では6年の間、基本的には臨床医になるための勉強をします。
『君たちが臨床に出たら(臨床医になったら)〜』という臨床医になることが前提のフレーズが講義の中で何度も出てきます。
そして、周りの同級生も9割9分が「臨床医になる!」とその道を歩んでいきます。
ですので、逆に6年の中で考えが変わる方が普通と言えるのかも知れません。
冗談ですが『君たちが法医学者になったら〜』と6年間暗示しながら教育できたら、もっと法医学者は増えると思いますね。笑
ということで、以上3つの主要な動機でした。
「意外と最初の理由が多い」
「意外と最後の理由が少ない」
というのが私が今回特に伝えたいことでした。
法医学者としてやっていくにはいろんな経験が武器になります。
そういう意味で『臨床医経験は全く無駄ではない(→むしろ有益・有意義である)』と私は言いたいですね。