医師は亡くなった方を診察(or検案)し、死亡診断書(or死体検案書)を作成します。
その中に"死因の種類"という項目があります。
この箇所は保険請求の際などに大変重要な項目になります。
それでいて、なかなか判断に困ることが少なくない難しい項目なのです。(参考リンク:「"死因の種類"はなぜあるのか?」)
その"難しさ"を伝えるために、私自身がよく使う【ロシアンルーレットは事故か?自殺か?】というテーマを今回は取り上げようと思います。
死因の種類は12種類あります。
"病死"から始まり、"不慮の外因"(≒事故)、"自殺"や"他殺"、"不詳の死"と続きます。
死亡診断書(死体検案書)は医師が記載するものであるため、この"死因の種類"の記載も医師が行わなくてはなりません。
性質上、"死亡診断書"の場合は全て"病死"となるので、"診断書"を書くかかりつけ医の先生がこの項目に悩むことは殆どないでしょう。
頭を悩ますのが、"死体検案書"の方を作成する"検案医"ないし"法医学医"なのです...。
早速ですが、"ロシアンルーレット"は事故ですか?自殺ですか?
ロシアンルーレット:回転式拳銃に1発だけ弾薬を装填し、適当にシリンダーを回転させてから自分の頭に向け引き金を引くゲーム。 (引用:Wikipediaより)
このゲームによって、不運?にも弾丸が頭に発射されて死亡してしまった場合、"死因の種類"はどうなりますか?
結論から書いてしまいますと、一般的には"自殺"とされます。
その理由は『(可能性は低いとしても)万が一弾丸が装填されていれば死んでしまうということを理解した上で、自ら銃口を自分の頭に向けて引き金を引いているから』です。
前述の記入マニュアルでは、"自殺"は『死亡者自身の故意の行為に基づく死亡』と定義されています。
従って、"ロシアンルーレットによる死亡"は"自殺"と判断されるというわけですね。
ところが、ここで重大な問題が出てきます。
「故意(の行為)」つまり『"自らの意思"をどうやって判断するのか?』という問題です。
単に「ロシアンルーレットをしていた」という説明だけなら、"不運な自殺"と思えます。
しかし、遊び相手から「弾は込めていないよ」と、嘘をつかれていたらどうでしょうか?
同じように、本人は「弾丸は入っていない」と勘違いしてふざけていただけの場合はどうなのでしょうか?
これらのケースでは、本人は「(弾が発射されて)死ぬわけがない」と思っているわけですよね。
このような死者の"故意"や"意思"を、ご遺体だけから判断するのは極めて難しいです。
この判断には、検案情報だけでなく、死亡した状況や環境といった情報が不可欠です。
つまり"警察からの情報"が必須なのです。
そして、運良く、その情報が得られたとしても、判断に困ることは少なくないのが現実だったりします。。
実際の死亡状況というのは、作られたシナリオのように全ての設定が明らかなわけではないのです。
それでいて、作られたシナリオ以上に現実は"細部"まで作り込まれています。
そのような細かなところまで考え出すと...法医学医の悩みは尽きません。。
"死因の種類"は簡単そうであって簡単ではないのです。