今回は"プッペの法則"[Puppe's rule]について書いていきます。
この"プッペの法則"は主に頭部外傷において使用される理論です。
『複数の打撃によって骨が折れた際、どの順番で骨折が出来たのか?(≒どの順番で打撃されたのか?)』
という質問に対して答える時に便利です。
論理的でありながら理解しやすいので、皆さんも興味深く感じるのではないかと思います。
【プッペの法則】[Puppe's rule]:複数の打撃を受けて骨折が生じた際、後発の骨折線は先発の骨折線を越えない。
ドイツのゲオルク・プッペ先生の名前が由来の法則です。
詳しく解説します。
【プッペの法則】
上の画像の場合、結論から言うと、
『①→②の順に打撃を受けた』
ということになります。
前述の概要をもう少し変えて説明すると
「後に出来た骨折線は、先に出来た骨折線上で終わる。」
「後に出来た骨折線の終点は、先に出来た骨折線上である。」
ということです。
②の骨折線は①の骨折線の上で終わっていますよね。
逆に①の骨折線から見ると、①の骨折線の終点は②の骨折線上にはありません。
従って、"この骨折が2回の打撲で起きたとすると"「①→②の順に出来た」ということが言えるのです。
...と言いたいところですが、この画像には若干問題があります。
この画像では、打撃部位を分かりやすくするため、あえてマークを入れました。
それでは、もし単純に骨折線だけだったらどうでしょう。
確かに、"2回の打撃"なら先ほど書いたような"プッペの法則"を適用できる典型例と思います。
しかし、もしかすると下図のように"1回の打撃"で出来ている可能性もあります。
ですので、先ほど"2回の打撃で起きたとすると"という回りくどい表現をしたのです。
ただ実際もし仮にハンマーで殴られているのなら、直接の打撃部位に下図のような"陥没骨折"が出来ていたりしますし、骨折や皮膚・皮下出血等を細かく観察すればそこまで難しくないことも多いんですけどね。
このように"プッペの法則"は法医実務上も頻繁に使用されています。
教科書通りにはいかないことも結構ありますが。
考えれば当たり前のことかも知れませんが、言われないと気付かないことだったりするんですよ。
まさに"コロンブスの卵"です。
法医学者の殆どはこの法則を知っていると思いますが、"プッペの法則"という名称自体は知らない先生も多い気がします。
是非名称も知ってもらって、この偉大なプッペ先生の功績を称えてあげてほしいですね。