"突然死"とは何か?

皆さんは"突然死"という言葉を聞いたことはありますか。

法医学ではこの"突然死"という言葉がしばしば出てきます。

英語では"sudden death"です。

「突然亡くなったのが"突然死"でしょ?」と思った方は最後まで是非読んでいただきたいですね。



『突然死』:症状発症の24時間以内に起きた非外傷性の予期せぬ死。

"Sudden death is non-violent, unexpected death occurring less than 24 hours from the onset of symptoms. " ※WHO定義より


詳しくみてきましょう。



"突然死"と聞くと「突然の死≒瞬間的な死」と思う方が多いと思います。

しかし、WHOの定義はそれと少しイメージが違っています。

"突然死"とは『イベントが起きてから24時間以内の死亡』のことを指します。

何か症状を発生して1日の猶予があるわけですね。

決して「発症後数秒亡くなった場合だけ」を示す言葉ではないのです。

もちろん「発症して数秒」も"突然死"の範疇ですけどね。


WHOは全世界の死亡統計を取っています。

統一したデータを集めるためにも世界共通の定義が必要になってきます。

その中の定義のひとつが、今回ご紹介している"突然死"の定義です。


ある国が「いや、我々の国では"1分以内の死"を"突然死"とするんだ!」何て自分勝手なことを言い出したら、世界で統一された死亡統計が調べられないですよね。

そのために明確な定義が必要になってきます。

「瞬間的な」と言われても漠然としています。

不整脈や心筋梗塞もある意味で"瞬間的な死"ではありますが、"即死"というほどの"超瞬間的な死"ではありませんよね。


では、「"超瞬間的ではないものの瞬間的な時間"とはどれくらいか...」というと感覚的には数秒〜数分とかなのかな?と思ったりします。

ですが、現実は"24時間以内"というかなり幅のある定義となっています。


世界には死因究明制度が整っていない国もたくさんあります。

「数秒〜数分なんて微妙な時間なんてわからない」なんて国も当然あるでしょう。

おそらくそういった国への配慮だと個人的に思っています。

"24時間以内の死"なら何とかなりそうですしね。



では、実際に法医学で使用する"突然死"はどうなのか?と言われると、、、

私自身は"24時間以内の死"という意図ではなく、"瞬間的な死(数分程度)"のという狭義の意味合いで使用していることが多いです。

もちろん学術的な論文や学会発表で使用する際は、きちんとした定義で使います。(というか、そういう場では"突然死"という言葉は私はあまり使わないです)

ただご遺族に説明する際などでは世間一般の認識と同じように、"瞬間的な死"とほぼ同義で"突然死(狭義)"を使っていますね。



途中でも触れましたが、日本では"突然の死"を判断し得る環境ですが、国によってはそれもままならないところもあります。

それでも世界で統一された基準の下、統計は取っていかなくていはなりません。

なので、多少歪みは生まれても、できる限り全世界で通用する定義を決めなければいけないのかな、と思ったりします。


これは世界規模に限った話ではありません。

日本国内においても同じことが言えます。

地域や記載する医師によって、言葉の定義が違っていては正確な統計は取れません。

だからこそ、死亡診断書を記載する医師には統一された基準の下、きちんとした定義で言葉(病名)を使用する必要があるのです。


皆さんも"突然死"という言葉を使用する際は、

広義の(本来の意味の)"突然死"なのか?
狭義の"突然死"(≒"瞬間死")なのか?

注意してみてください。