今回は死後経過時間を推定するために使用される"ノモグラム法"をご紹介したいと思います。
この"ノモグラム法"は手順通りやれば誰でも簡単に使用できるツールで便利です。
日本では使用している話をあまり聞いたことはありませんし、一部のテキストで触れられているくらいです。
しかし、海外の教科書では普通に記載されていますし、由緒正しい推定法だと思います。
みていきましょう。
これが"ノモグラム"です。
大前提として、直腸温・気温・体重の3つは最低限必要になります。
またこの"ノモグラム"は気温が23℃以下用のものです。
気温が23℃以上の場合の"ノモグラム"もあるので、状況に合わせて使い分けます。
具体的な手順は以下の通りです。
① 直腸温(左目盛:28℃)と、気温(右目盛:15℃)を直線で結ぶ。(緑色)
すると、元々引いてある黒直線と交点が出来ます。(黒丸)
② ①で出来た交点と、左下の円の中心を直線で結ぶ。(橙色)
③ 体重(50kg)の円弧をたどって、②との交点を読み取る。(赤二重丸)
→そうすると【9時間】という結果が出ます。
ちなみにこの例では、1番外側の円弧の"2.8"という部分に入ってきていますので、
【死後経過時間 = 9時間 ± 2.8時間】この許容範囲中に95%が入ってきます。
ざっくりと説明するとこういった手順です。
その他、正確には「着ている服やその濡れ具合」などで補正を行います。
意外とすぐにできちゃいます。
また一々計算しなくても良い(線を引いて読み取るだけ)なので、慣れると一瞬ですね。
ちなみに、以前ご紹介した直腸温・計算法で計算してみますと、(参考記事:「直腸温計算法」)
37.0℃ ー 29.0℃ = 8.0℃
1時間に0.8℃ずつ低下すると考えると、、、
8.0 ÷ 0.8 = 10時間
【死後およそ10時間】と出ます。
"計算法"でも約1時間のズレで収まります。
"ノモグラフ法"でも厳密には【9 ± 2.8 時間】なので、実質的には"計算法"とほぼ一緒ですね。
むしろ"計算法"には"気温"の要素がないので、ある意味で使い勝手が良いと言えるかも知れません。
今回は"ノモグラム法"による死後経過時間の推定をご紹介しました。
冒頭に書いたように、日本では殆ど見かけません。
実は私自身も用紙を用意したりするのが面倒なので、普段は専ら"計算法"です。(警察官にも説明しやすいですし)
しかし、大変興味深い方法ですよね。
この方法を最初に編み出した法医学の先生は本当にすごいですよ。
そして、体重目盛が200kgまであるのはさすが海外...だなと感じます。