法医学に進むデメリット

将来の道に悩んでいる時、実際に有用なのは"メリット"よりも"デメリット"に関する情報だったりしますよね。

ですので、今回は「法医学医になるデメリット」について、私自身の経験も踏まえて書いていきたいと思います。


話は"臨床医"と"法医学医"の対比を軸に進めていきます。

つまり今回のテーマは、正確には『臨床医ではなく法医学医になるデメリット』とお考えください。



『法医学医になる5つのデメリット』

・臨床医学から離れてしまう
・給料が安い/アルバイトの幅が狭まる
・潰しが効かない
・業界が狭い
・そもそも法医学医になれるとは限らない


一つずつみていきましょう。



[①臨床医学から離れてしまう]


これは実際に法医学に進もうとしている医師にとっては最大の懸念点だと思います。

実際に法医学に進むと、やはり臨床医学からは大きく離れてしまいます。

臨床医の視点からみると「"臨床医コース"から逸れてしまう」と言えます。

"基礎医学"(ないし"社会医学")ということで、大学の中でも法医学は"臨床医学"から物理的にも分けられてしまいます。


しかし、「完璧に臨床から離れなければいけないのか?」と言われると、完全にそうなわけではありません。

例えば、"臨床法医学分野"です。

確かに最近は"児童虐待"関係の法医学分野において、病院に出張する法医学医も出てきています。

そこでは比較的臨床医とも交流も盛んなようです。

しかし、まだまだ全国的に一般的ではありません。


また『(臨床系の)医局に在籍しつつ法医学教室で研究を行う』というのを認めているところもあります。

この場合は、「普段はあくまで医局の臨床医として働き、研究に関してのみ法医学教室でやる」といったパターンみたいです。

ただ身体は一つなわけですから、やはり純粋な法医学医という意味では少しイメージが違ってくるかも知れません。

逆に「主座を法医学に置き、研究は臨床で...」というパターンは、、、私自身は聞いたことはありません。


従って、本当に法医学医として働くのであれば、現状では臨床医学から離れてしまうことをある程度覚悟しなければならないと思います。



[②給料が安い]


これは度々取り上げていますが、やはり給料は減ります。

法医学医の給料は、"大学教員"としての給与が基本的には全てです。

一方で、臨床においては、仮に大学からの教員としての給与がゼロである"医員"であったとしても、診療を行う臨床医の場合は大学病院(やバイト先病院)からそれなりの給与が出ます。

このシステムの違いはかなり大きいです。

具体的に、法医学医の給料は同期の臨床医の半額くらいです。


なので、偉くなるまでは(なっても?)アルバイトありきで法医学医をやっていく必要があります。

ところが、大学によってはアルバイトの時間制限があったりします。

また前述のように、臨床から離れてしまうために「アルバイトの幅が制限されてしまう」といった問題もあります。


こういう意味では、「臨床医学から離れるとは言え、完全に離れきることはできない」と言えるのかも知れません...。



[③潰しが効かない]


"法医学"というのは医学の中でもかなり特殊な分野になります。

臨床医学であれば、「勤務医→開業医」への転向はもちろん、老人ホーム嘱託医・検診医・保健所医・産業医などなど臨床医学の知識を生かした職業は比較的たくさんあります。

一方で法医学医としての知識は実質「法医学者として働く」以外に生かせる職業はほぼ皆無です。

"警察医"も法医学知識を必要としますが、"警察医"は実際は開業医ドクターに嘱託されていることが殆どなので、あまり現実的ではないでしょう。


ということで、後述しますが、万が一「法医学で数年間勉強した後に法医学を離れる」となった場合、

例えばその後、臨床医として再度働き始めるとなると、その法医学数年間は大きなブランクになってしまいます。

その間には上述のように、臨床医学から離れてしまい最新の医学知識にも触れ難い環境ですので、やはり少なからずビハインドになってしまうことは否めません。


こういった点は私自身が「まず気軽に一度法医学をやってみなよ!」とは医学生さんに言えない理由の一つです。



[④業界が狭い]


やはり"法医学"という業界は良くも悪くも狭いです。

全国に医師が32万人いる中、法医学医はたった140人しかいないので、どうしようもないと言えばどうしようもないことですが。

そうなってくると、やはり毎年毎年あまり大きな変わり映えはしません。

毎年でワイワイしている?臨床と比べると、学会でも法医学は少しものさみしさを感じることあります。

しかし、これは逆に「法医学医同士の顔が知れている」や「自分が頑張り業績さえ上げれば比較的その道の専門家になりやすい」とも考えられますし、純粋にデメリットばかりではないのかも知れません。



[⑤確実に法医学医になれるとは限らない]


「法医学医になりたい!」と思っている医師の全てが全て、実際に法医学医になれているわけではありません。

これには『法医学教室のポストが少ないこと』が大いに関係しています。

このブログでもよく取り上げるように、全国の法医学教室の教員ポストは決して多くありません。

そのため「大学院が終わった後の若手法医学者の就職先がない」という事態が生じます。

もちろん全国的には法医学医が足りていないわけですが、だからといって「全国どこにでも飛んで行きます!」という法医学者ばかりでは当然ないですよね。

その結果、とても残念なことですが、大学院博士課程修了後、志半ばで法医学を去っていく人も出てきます。

前述のように、法医学知識はとても専門的であるため、臨床医に戻った際にその期間はブランクになりかねず、二重の意味で"足枷"になってしまいます。


この問題点が何とかならないと、この先の法医学は決して良くなっていかないと私は思っています。



以上、5つのデメリットを今回は取り上げました。


法医学医を本気で考えている方にとってはかなりヘビーな内容だったと思います。

しかし、本気で考えているからこそ避けて通るべきではないと私は思います。


正直、メリットはいくらでもあります。

実際に「法医学を目指したい!」と思っている方にとってはなおさら改めて言うまでもないですよね。

だからと言って盲目的にならず、デメリットについても一度きちんと考えてみることを私は強くおすすめします。

貴方の大切な医師人生なのですから。