散弾銃創と射撃距離の関係

"散弾銃・ショットガン"はたくさんの小さな弾が発射される銃器です。

主に猟銃やクレー射撃などに使われます。

単発の弾丸が発射されるピストルによる銃創とは違い、この散弾銃による銃創はやや特殊です。(参考書記事「銃創 」)

今回はこの"散弾銃創"と"射撃距離"との関係をみていきたいと思います。



散弾銃では、発砲された射撃距離によって出来る銃創が変わってきます。

関係は↓の画像の通りです。

shotgun-wound.jpg


詳しくみていきます。



冒頭にも書いたように、散弾銃からは2-5mm程度の小さな弾丸が多数発射されます。

この際に、各弾丸は正面から見ると放射状に拡散していきます。

画像のように横から見ると、裾広がりな扇状に徐々に拡散していきます。

弾丸としては、近距離では各弾丸は密集し、遠距離になればなるほどバラけていきます。

それが銃創にも現れてくるわけですね。



教科書的な目安を書くと、一般的な散弾銃およびその弾丸であれば、

射撃距離〜1m以下:密集しまとまった各弾丸による一つの大きな銃創。
射撃距離1〜10m:真ん中に比較的大きな銃創、その周りにバラけた弾丸(散弾)による小さな銃創。
射撃距離10m以上〜:バラけた散弾1つ1つによる複数の小さな銃創。

離れれば離れるだけ、散弾による周囲の小さな散弾による銃創の範囲は広がっていきます。


ただし、この射撃距離の目安はあくまで一般的な散弾銃の"拡散度"を元にしたものです。

もっと言うと、散弾銃の種類によってこの"拡散度"つまり

「どれくらいバラけるのか?」
「どれくらいの集弾性なのか?」

が変わってくるのです。

また"チョーク"(絞り)という先端に装着する器具を使えば、もっと拡散度は減り、集弾性を高めることもできます。

shotgun-choke.jpg

従って、正確な射撃距離を求めようと思えば、最終的にその散弾銃の現物を実際に発砲して導き出さなければならないこともあります。



その他、散弾銃の弾自体には、"弾丸"以外に原動力となる"火薬"、そしてその爆発力をうまく弾丸に伝えるための"ワッズ"という部品が含まれます。

shotgun-bullet.jpg

近距離での散弾銃創では、こういった"火薬"や"ワッズ"の進入が認められる場合もあり、射撃距離の参考になることがあります。



以上、今回は"散弾銃創と射撃距離の関係"を中心に見ていきました。

一般的な拳銃・ピストルと少し違っているのがおわかりいただけたと思います。

猟銃として使用されることもあり、日本においてもまれに経験されます。

従って、日本の法医学者にとっても重要な知識と言えます。