第88回医師国家試験 A問題 問7 [88A7]

88A7
医師の届出義務とそれに関する法律との組合せで正しいのはどれか.3つ選べ.

a 異状死体 - 医師法
b 死胎 - 死体解剖保存法
c コカイン中毒者 - 覚せい剤取締法
d 人工妊娠中絶 - 優生保護法
e エイズ(AIDS) - 後天性免疫不全症候群の予防に関する法律




正答は【a, d, e】です。

※現在は下記の通り法律が変更となっています。
優生保護法 → 母体保護法
覚せい剤取締法 → 覚醒剤取締法
後天性免疫不全症候群の予防に関する法律 → 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)



[a] 正しい。医師法 第21条『医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。

[b] 誤り。"死産の届け出"は死体解剖保存法ではなく、厚生省令によって定められています。死産の届出に関する規程 第3条『すべての死産は、この規程の定めるところにより、届出なければならない。』※ちなみに前項の医師法第21条はあくまで"異状死胎"に関する規定となっています。

[c] 誤り。覚醒剤取締法には、医師に対する覚醒剤(コカインを含む)使用者届出義務は規定されていません。ただし"麻薬・大麻・あへん"に関しては、麻薬及び向精神薬取締法において、医師に対する都道府県知事への麻薬中毒者届出義務が規定されています。麻薬および向精神薬取締法 第58条の2『医師は、診察の結果受診者が麻薬中毒者であると診断したときは、すみやかに、その者の氏名、住所、年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項をその者の居住地の都道府県知事に届け出なければならない。』※←警察への通報ではない。

[d] 正しい。母体保護法 第25条『医師又は指定医師は、第三条第一項又は第十四条第一項の規定によつて不妊手術又は人工妊娠中絶を行つた場合は、その月中の手術の結果を取りまとめて翌月十日までに、理由を記して、都道府県知事に届け出なければならない。

[e] 正しい。感染症法 第12条『医師は、次に掲げる者を診断したときは、厚生労働省令で定める場合を除き、第一号に掲げる者については直ちにその者の氏名、年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項を、第二号に掲げる者については七日以内にその者の年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項を最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければならない。



届け出義務に関する法律を聞いた問題ですね。

オーソドックスな法律ばかりなので、そこまで深く勉強しなくても得点できると思います。

法律は条文に答えとなる文言が明確に書かれていますから、問題としては出しやすいですね。

逆にその法律を知っているか?知っていないか?が大きな分かれ道となり得ます。

問題としては擦られた法律ばかりなので、有名どころを押さえておけば大丈夫でしょう。


医事法の中でも法医学においては、近年「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」(通称"死因身元調査法")が施行され、

「警察署長の権限で遺族の承諾なしで解剖が実施できるようなった」(※ただし原則として、解剖が必要である旨を遺族にあらかじめ説明しなければならない)というのは重要です。


あと最近で言えば、"死因究明等推進基本法"が施行されたので、その中の基本的施策↓を見ておけば法医学としては完璧なのではないでしょうか。

・死因究明等に係る人材の育成等
・死因究明等に関する教育及び研究の拠点の整備
・死因究明等を行う専門的な機関の全国的な整備
・警察等における死因究明等の実施体制の充実
・死体の検案及び解剖等の実施体制の充実
・死因究明のための死体の科学調査の活用
・身元確認のための死体の科学調査の充実及び身元確認に係るデータベースの整備
・死因究明により得られた情報の活用及び遺族等に対する説明の促進
・情報の適切な管理



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