第89回医師国家試験 A問題 問6 [89A6]

89A6
死亡診断書について正しいのはどれか.2つ選べ.

a 交付は医療法で定められている.
b 終末期状態の心不全は原死因となる.
c 自殺は死因の種類として不慮の外因死となる.
d 正当な理由なく交付を拒んではならない.
e 医師本人の署名があれば押印は不要である.




正答は【d, e】です。


[a] 誤り。死亡診断書の交付は"医療法"ではなく"医師法"に規定されています。医師法 第19条第2項「診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。

[b] 誤り。死亡診断書(死体検案書)記入マニュアルには、「終末期の状態としての心不全、呼吸不全等」は書かないよう求められています。「明らかな病態としての心不全、呼吸不全」を記入することは可能です。
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[c] 誤り。死因の種類において、自殺は外因死の中でも"不慮の外因死"ではなく"その他及び不詳の外因"の中に分類されます。
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[d] 正しい。前述の医師法第19条第2項の条文の通り、"(医師は)正当の事由がなければ、これ(死亡診断書等の交付)を拒んではならない"と定められています。

[e] 正しい。問題文の通り、診断医本人の署名があれば押印の必要はありません。またちなみに近年の改正で「記名押印は不可、原則署名」へ変更となりました。



死亡診断書(死体検案書)に関連した問題ですね。

関連法規も医療法や医師法といった有名どころなので、あまり深く考えなくてもよさそうですね。

この問題に関しては厚生労働省が毎年発行している"死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル"を読んでいれば得点できたと思います。


ただ[b]や[c]といった選択肢は少し細かな知識を聞いています。

"終末期の状態"(や"明らかな病態")という表現は独特ですし、意味合いとしても実務上重要です。


マニュアルをよくよく読み込むと、結構重箱の隅が気になってきます。

例えば、他にも以下のような注意書きがあります。


【死因欄】死因としての「老衰」は、高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用います。

【手術欄】I欄及びII欄の傷病名等に関係のある手術についてのみ記入します。

【死因の種類欄】自殺の場合は、手段の如何によらず「9自殺」を○で囲みます。

【外因死の追加事項欄】「1病死及び自然死」の場合でも「死亡の原因」欄に損傷名等を記入した場合は、「外因死の追加事項」欄も外因の状況等を可能な限り具体的に記入します。


細かい点を挙げればいくらでもあります。

ですが、重要な点はきっと法医学の講義や実習で教えてくれると思いますよ。

きちんと講義は受けましょうね。笑



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