第102回医師国家試験 F問題 問3 [102F3]

102F3
死体検案書について正しいのはどれか.

a 死因統計の資料となる.
b 歯科医師も交付できる.
c 直接死因は警察官が決定する.
d 検案日と検案書発行日は同一である.
e 検案をした医師以外の医師も交付できる.




正答は【a】です。


[a] 正しい。死体検案書および死亡診断書は死因統計の資料となります。また「人間の死亡を医学的・法律的に証明する」という意義もあります。

[b] 誤り。歯科医師は死体検案書を交付できません。死体検案書を交付できるのは医師のみとなっています。

[c] 誤り。直接死因を含む死因は全て医師が決定します。死因の判断は医行為であり、医療従事者の中でも医師のみが行うことができます。

[d] 誤り。検案日と検案書発行日は意味が違いますので、必ずしも同一日が記載されるわけではありません。例えば、後日検案書を再発行した場合などでは、検案した日に変更はありませんが、検案書発行日はその再発行した日付に変わっています。ただ検案した日の当日に検案書も発行した場合は同一の年月日が記載されることになります。

[e] 誤り。当該検案書を交付できるのは、実際にその検案を行った医師のみです。医師法 第20条「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。



死体検案書に関する問題です。

同じような問題が多数出題されていますね。

今回の正答も正解が明らかな選択肢になっているので、そこまで難しくないでしょう。


目新しい選択肢である[c]なんて言わずもがなで誤りの選択肢ですし、[d]も語句の意味を考えると何となく間違っている気がしますよね。

ただ[d]に関しては、基本的に1通目の死体検案書は「検案した日の当日に検案書も発行される」ことが殆どなので、結局同一の年月日が記載された死体検案書を受け取る機会の方が多いとは思います。

[d]の解説文の通り、再発行など例外的なケースで、検案日と検案書発行日が違っていることになりますね。


もしかすると、選択肢[e]は若干迷った方がいるかも知れません。

医師法第20条が頭をよぎった方は一瞬で選択肢から消せたと思いますが。


解説の通り、当該検案書を交付できるのは"実際にそのご遺体の検案を行った医師"のみです。

もし同じそのご遺体の検案書を別の医師が発行しようと思えば、再度その別の医師がご遺体を検案し、新しい死体検案書として発行するしかありません。

その際、ご遺体がすでに火葬されてしまった場合は、現実的に検案ができませんので、結局そのご遺体の死体検案書は新たに作成することもできないということになります。(遺灰を"検案"して、死因不詳の死体検案書なら新しく書けるのか?)


従って、死体検案書を交付する医師の責任はとても重いのです。

万が一その検案結果が誤っていたとしても、ご遺体が火葬されてしまった後では修正しようがない(→修正の根拠となるご遺体がない)わけです。

なので、その医師が自らの医師で撤回・修正をしない限り(←もちろんこれもご遺体がない以上、他人が指摘しようがなく、その医師の善意に任せるしかない。)、その誤った検案結果がそのまま通用されることになります。

皆さんが無事医師となり、将来検案する際には、是非このことをしっかりと理解しておいてくださいね。



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