90A16
医師の対応として適切なのはどれか.2つ選べ.
a 患者の会社の上司から強い要請があったので,本人に断ることなく病状を説明した.
b 死亡した患者の家族から強い要請があったので,診療録の記載内容を書き換えた.
c 電話で患者の容態を知り得たので,処方箋を交付した.
d 休日に休養していたところ患者が来院したが,休日診療所に行くように直接指示した.
e 診療中の患者が受診後病状が急変し20時間後に死亡した.家族の要請で死亡診断書を交付した.
正答は【d, e】です。
[a] 誤り。刑法134条第1項や個人情報保護法第27条等により、知り得た情報を他人に漏らすことは禁じられています。
[b] 誤り。行使を目的として改ざんすれば、刑法第156条(虚偽公文書作成罪)や同159条(私文書偽造罪)などに抵触する可能性があります。行使を目的としなくても、医師の対応として不適切であることは明らかです。
[c] 誤り(※出題当時)。医師法第20条「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。」の規定により、対面診療が原則です。ただし、昨今は一定の条件下でオンラインを含む遠隔診療が限定的に認められています。
[d] 正しい。医師法第19条第1項「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」と規定されています。しかし、下記の通り、例外事例が厚生省からの通知で示されており、医師の対応として適切と考えられます。
「休日夜間診療所、休日夜間当番医制などの方法により地域における急患診療が確保され、かつ、地域住民に十分周知徹底されているような休日夜間診療体制が敷かれている場合において、医師が来院した患者に対し休日夜間診療所、休日夜間当番院などで診療を受けるよう指示することは、医師法第十九条第一項の規定に反しないものと解される。〜」
[e] 正しい。「診療中の患者が受診後に急変して死亡した」ということなので、診療中の疾病に関連した死亡であるのなら、選択肢の通り"死亡診断書"を交付できます。また最終診療から24時間以内の死亡であるため、死後改めて診察するを行うことなく、遺族の求めに応じて直ちに死亡診断書を交付できます。
ほぼ常識問題ですね。
専門知識を持たずとも正答できることでしょう。
あえて付け加えるなら、[c]で書いたように、原則対面診療であるものの、一定の条件下で、電話やオンラインによる診療も限定的に認められています。
従って、現時点で出題されれば正答として良いかも知れませんね。
また近年ではオンラインによる死亡診断も限定的に認められています。(電話のみは不可)
「医師が対面診察を行うまでに12時間以上をかかってしまう場合(離島や僻地など)」といった一定の条件を満たす場合に、看護師の補助の下、医師は遠隔から死亡診断書を交付できます。
当然ですが、死体検案書を交付すべき"異状あり"のご遺体についてはオンライン死亡診断の対象となりません。(=不可)
[d]では"応招義務"について触れられています。
令和元年に厚生労働省から"応招義務"の解釈について整理するため、改めて具体的な事例が通知の中で示されました。(医政発1225第4号)
・緊急対応の要否 (病状が深刻か?安定しているか?)
・診療を求められたのが診療時間(勤務時間)内か?外か?
などの観点から類型を提示しています。
国試的にはさすがにここまで出ないでしょうが、詳しく知りたい方は通知を参照してください。
法律に関連した出題は常にアップデートが必要になります。
公衆衛生問題は最新のものをしっかりと演習しておきましょう!