92A11
異状死体届出の必要がないのはどれか.
a 交通事故による植物状態に起因する嚥下性肺炎での死亡
b 気管支炎治療のため投与した抗生物質によるショック死
c 生後5ヵ月の乳児の保育所での突然死
d 肺癌で入院中の患者の喀血による窒息死
e 救急来院時の病態不明の心肺停止死
正答は【d】です。
[a] 誤り(=届け出の必要あり)。外因性のイベントが発端となった死ですので、異状死体の届け出が必要です。
[b] 誤り(=届け出の必要あり)。疾病の治療のための薬剤投与であり、いわゆる"診療関連死"ですが、法医学会の提唱する「異状死体=確実に診断された内因性疾患で死亡したことが明らかである死体以外の全ての死体」に照らし合わせると、異状死体の届け出をしてよいと考えられます。
[c] 誤り(=届け出の必要あり)。単なる「突然死」としか書かれておらず釈然としませんが、死因が不明である以上、異状死体届け出をすべきでしょう。
[d] 正しい(=届け出の必要なし)。診療中の内因性疾患に関連した死であり、明らかに異状と判断される要素が問題文にはなく、異状死体の届け出をあえて行う必要はないと考えられます。
[e] 誤り(=届け出の必要あり)。病態(死因)が不明の死であり、[c]と同様、異状死体の届け出をすべきだと思われます。
「異状死体の届け出が必要か?不要か?」問題ですね。(類似問題:85A98, 89A8)
過去にもいくつか解説を書いてきているので、改めて追補を書く必要もないでしょうか。
[b]の"診療関連死"に関しては、解説の通り、「異状死体=確実に診断された内因性疾患で死亡したことが明らかである死体以外の全ての死体」と考えれば、正解するのは造作もないことでしょう。
ただし実際の実臨床においては、この法医学会の考え方に対して臨床医の先生方の批判も多く、今出題すると再び議論が再燃しそうな気はします...。
実際のところ、どう運用されているのか?は臨床の先生にしか分かりませんが、
「抗菌薬投与による(アレルギー?)ショックが、事前に予期されていたのか?」
「そのリスクを患者やその家族にきちんと説明されていたのか?」
などがネックになってくるのでしょうか。。
少なくとも、第92回(1998年)の医師国家試験においては、「異状死体=確実に診断された内因性疾患で死亡したことが明らかである死体以外の全ての死体」と考えていた方が良かったようです。