第93回医師国家試験 A問題 問44 [93A44]

93A44
死亡時刻を推定するのに役立つ所見はどれか.2つ選べ.

a 死斑の色調
b 死体硬直の程度
c 角膜混濁の程度
d 瞳孔の大きさ
e 腋窩温




正答は【b, c】です。


[a] 誤り。"死斑の色調"は死亡時刻の推定に直接役立ちません。死因の推定には役立つ可能性はあります。

[b] 正しい。死後硬直は、教科書的には死後1時間程度から出現し始め、12時間程度で最高潮となります。およそ1日後あたりから徐々に硬直は解けていき、数日〜1週間程度で完全に無くなります。

[c] 正しい。角膜は死直後では透明ですが、死後6時間程度から徐々に混濁が始まり、2日ほど経つと完全に瞳孔が透見できなくなります。

[d] 誤り。"瞳孔の大きさ"は死亡時刻の推定には直接役立ちません。"瞳孔の反応性"に関しては、かつては、死後数時間以内にコリンエステラーゼやアトロピンなどを点眼することによって、瞳孔の反応性(→散瞳・縮瞳)を観察して死後経過時間を推定する手法がありました。ただし、この反応は死後数時間程度の限られた時間内でしか認められないため、最近は殆ど用いられません。

[e] 誤り。"体温低下"は死後経過時間の推定によく利用されますが、この時の"体温"は"深部体温"(特に"直腸温")を指します。従って、表面温度である"腋窩温"は死亡時刻の推定には不適です。実務上は"直腸温"が一般的ですが、「最も適した体温は"肝臓内の温度"である」というのをかつて聞いたことがあります。



死亡時刻の推定に関する法医学知識を問うた問題ですね。

この問題はシンプルかつ端的で、個人的に素晴らしい問題だと思います。


・"死斑"それ自体は死亡時刻の推定には直接関係がない
・"瞳孔の大きさ"は死後経過時間と関係はない
・法医学で使用される"体温"は"腋窩温"ではなく"直腸温"である

法医学でよく耳にするキーワードがちりばめられているので、一見すると、どの選択肢も何となく合ってそうな気がしますよね。

しかし、得点するにはよくよく考える必要があって、、、

皆さんも、素晴らしい問題だとは思いませんか!?笑


ちなみに、死亡時間の推定に有用な所見は、今回の正答を含めて4つあります。

・死体硬直の程度
・角膜混濁の程度
・死斑退色の程度
・直腸温の低下

shiboujikan.jpg

以上の4つが一般的だと思います。



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