第90回医師国家試験 A問題 問14 [90A14]

90A14
医師の届出義務として正しいのはどれか.3つ選べ.

a 墜落外傷による死体を検案したときは警察に届け出る.
b 麻薬中毒者と診断したときは都道府県知事に届け出る.
c 梅毒と診断したときは最寄りの保健所長をへて都道府県知事に届け出る.
d 覚醒剤を所持している患者を診察したときは警察に届け出る.
e 不法滞在外国人の患者が入院したときは警察に届け出る.




正答は【a, b, c】です。


[a] 正しい。外因死であるため、異状死体の届け出を行う必要があります。

[b] 正しい。覚醒剤中毒者に届出義務はありませんが、麻薬中毒者には診断医にすみやかな届出義務があります。

[c] 正しい。"梅毒"は感染症法で5類感染症に指定されています。このため、診断医には7日以内の届け出が義務づけられています。

[d] 誤り。覚醒剤に関する届出義務は診察医にありません。麻薬(麻薬・大麻・あへん)中毒には届出義務がありますが、厳密には「診察の結果受診者が麻薬中毒者であると診断したとき」となっており、届け出先も"警察"ではなく"都道府県知事"となっています。

[e] 誤り。[d]にも関連しますが、医師が警察に届け出る義務があるのは、医師法第21条にある"異状死体・異状死胎"のみです。



医師の届出義務に関する問題ですね。

確かに、医師には多くの届出義務が課されています。

しかし、その届け出先は、患者の公衆衛生に結びつく"保健所長"か"知事"が殆どです。

[e]の解説にも書いたように、医師が"警察"に届け出なければならないのは"異状死体・異状死胎"のみです。

これは医師の本来の業務は、処罰や捜査を目的とした警察への届け出(≒通報)といった業務ではなく、あくまで患者の診断や治療である点からも理解できる点かと思います。

とは言え、医師免許を国から頂戴している以上、人の死を診る医師にも、犯罪捜査の端緒を得るという一定の役目が課されており、だからこそ医師法第21条の規定があるのかな?と個人的には理解していますが...。


ともかく、「医師が"警察"に届け出なければならないのは"異状死体・異状死胎"(医師法第21条)のみ」という点はしっかりと押さえておきましょう!



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