第96回医師国家試験 G問題 問12 [96G12]

96G12
医師の行為について適切でないのはどれか.

a 3類感染症の患者を診断したとき保健所を経由して知事に届け出る.
b 食中毒患者を診断したとき保健所長に届け出る.
c 死体を検案して異状を認めたとき警察に届け出る.
d 後天性免疫不全症候群〈AIDS〉患者の氏名を保健所長に届け出る.
e 高血圧症で通院している患者が電話で感冒薬の処方せんを求めたとき断わる.




正答は【d】です。


[a] 正しい。感染症法 第12条で、3類感染症を診断した医師は、直ちにその者の氏名、年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項を、保健所を経由して都道府県知事に届け出ることが義務づけられています。

[b] 正しい。食品衛生法 第63条で、食中毒を診断ないし検案した医師は、直ちに最寄りの保健所長へ届け出ることが義務づけられています。

[c] 正しい。医師法 第21条で、検案して異状を認めた医師は、24時間以内に所轄警察署に届け出ることが義務づけられています。

[d] 誤り。感染症法 第12条で、AIDSを含む5類感染症(※無症状病原体保有者を含む)を診断した医師は、7日以内にその者の年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項を、最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出ることが義務づけられています。[a]のような1〜4類感染症とは違い、5類感染症では"患者の氏名"を届け出る必要はありません。

[e] 正しい。医師法 第20条で、無診察治療(処方)は禁止されています。そのため、本選択肢の対応は正しいと言えます。近年では新型感染症の流行を受けて、一定の条件を満たした場合は、電話診療による処方は認められています。



"医師の届出"に関する問題ですね。

さすがにどの選択肢も既出感があります。

ただし、プール問題になってくると、より細かな知識が問われる傾向にあります。

今回の問題でも正答の選択肢である[d]はかなり細かいところを突いてきています。


感染症法(=感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)の第12条には↓こうあります。


医師は、次に掲げる者を診断したときは、厚生労働省令で定める場合を除き、第一号に掲げる者については直ちにその者の氏名、年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項を、第二号に掲げる者については七日以内にその者の年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項を最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければならない。

第一号 一類感染症の患者、二類感染症、三類感染症又は四類感染症の患者又は無症状病原体保有者、厚生労働省令で定める五類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者及び新感染症にかかっていると疑われる者
第二号 厚生労働省令で定める五類感染症の患者(厚生労働省令で定める五類感染症の無症状病原体保有者を含む。)


よくよく見ると、5類感染症では、

・届け出期間が"7日以内"である
・届け出事項に"患者の氏名"は含まれない

という点が、他類の感染症とは違っているのです。

今回はこの後者が問われているというわけですね。

少し細かすぎる気はしますが、「患者の名前を届け出るのか?どうか?」という点はプライバシー的な観点からも実務の上ではかなり大きなポイントではあります。


実際回答するには国試テクニック的に、「[a]と[d]で同じような選択肢だが、どちらかが誤りか...?」とカンを冴え渡らせるしかないでしょうか。

難しい問題でした。



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